幼馴染から助けてくれた常連さんに囲い込まれました。
「美夜、次の合コンも参加するんだよね」
「うん、するする。お願い」
桜井美夜は大学の学食で友人の紗奈と昼食を食べながら話していた。美夜は心の中でひっそりと意気込んでいる。次こそ彼氏をゲットしたい、と。
「みーんな彼氏出来ちゃって、合コン来てくれる子減ってるんだよね。だから、って言ったらあれだけど美夜には助かってるよ」
紗奈はイケメン好きで常に出会いを求め、合コンをセッティングするのが趣味だ。そんな彼女は恋をしたい、彼氏が欲しい美夜にとって出会いの場を提供してくれる、頼もしい存在。
「今度こそ、今度こそ彼氏を…」
並々ならぬ決意を感じさせる美夜に紗奈は不思議そうに尋ねる。
「美夜ってさ、何でそんなに彼氏欲しいの?」
紗奈の疑問は最もだ。美夜は外見からして大人しく、お淑やかな印象を与える。とても合コンに行きまくり、出会いを求めるようには見えないのだ。
美夜は遠い目をして言った。
「…私彼氏いない=年齢じゃん?」
「知ってる」
「今までいい雰囲気いける!と思って告白したら振られ、連絡先交換してもいつのまにか頻度が減って自然消滅…私も!皆みたいに恋愛したいの!」
心からの叫びに紗奈は何とも言えない表情になった。
「それずっと?告っても振られてるってこと?」
「そうだよ、友達にも行けるよ!って背中押されていった結果…」
当時のことを思い出してズーン、と暗い気持ちになる。勇気を出して気持ちを告げても、返ってくるのはいつも同じ。
『そういう目で見たことない、ごめん』
連絡先を交換した相手も、最初は満更でもなさそうなのにいつの間にか連絡が取れなくなり、別の可愛い子と歩いている姿を目撃したことも1度や2度じゃない。
美夜は分かってる。自分が凡そモテる容姿をしてないことを。選ばれない方、であることを。自分磨きをしたこともあった、でもその度にどうせ無駄だと諦めてしまった。
それでもこうして、合コンに出て出会いを求めるのだからしつこいと呆れてしまう。
「それはキツいわ…ん?でも美夜仲良い男子いるよね、経済学部の青山くん」
その名が出た瞬間、美夜の顔が強張りそうになるも必死で耐える。
「…まあ、うん。仲は良い、かもね」
「誰でもいいから彼氏欲しいのなら、青山くんに言ってみれば?向こうも満更でもなさそうだし」
冗談じゃない、と叫びそうになる美夜は笑うことで誤魔化す。
「いやいや、和樹くんは私のこと幼馴染としか見てないよ」
「そうかな?」
「和樹くん綺麗な子と仲良いし、私のこと眼中にないよ」
紗奈はきっと美夜は和樹と釣り合わないと、己を律しているとでも思ってるのだろう。実際和樹は人前では美夜に優しく接してくれる。それを知ってる紗奈が彼氏にどうか?と聞くのも至極当然のことだ。
「うーん、まあ青山くんイケメンだし青山フーズの御曹司なんでしょ?幼馴染とはいえ気後れしちゃうかー」
「そうそう、彼にはもっと相応しい人がいるよ」
そう締めくくると紗奈は話題を和樹から合コンに戻してくれた。
< 1 / 39 >