幼馴染から助けてくれた常連さんに囲い込まれました。
思わず口を手で塞ぐが、時すでに遅し。カイはとても嬉しそうに、そして不敵に微笑んでいた。

「薄々察してはいたが、はっきり好きと言われるのはやはり嬉しいな。お互い好き同士なら問題ないだろう?俺と付き合ってくれないか、結婚を前提に」

夢じゃなくて現実だ、とやっと理解する。一生分の幸せを味わったと思ったのに、それ以上の幸福があるなんて昨日までの美夜は想像してなかっただろう。

「…嬉しいんですけど、私が婚約しないと父が」

「ああ、そのことなら心配いらない。すでに手は打ってる、昼にはカタがつくと思うよ」

「え?」

美夜はカイの顔を見上げた。昨夜の獣のような雰囲気は鳴りをひそめてはいるものの気怠げな色気を纏った彼はとても格好良い。

「手を打ったって、カイさん何をしたんですか。というか、何者ですか…」

乗ってきた車も、住んでいるマンションも凡そ一般人には手が出せないものばかり。カイがただのサラリーマンでないことは薄々分かっていた。

心配そうに訊ねる美夜にカイは悪戯っ子のように笑い、「今は秘密」と告げる。そう言われるとそれ以上追求出来ない。

「美夜、今日大学は?」

「休みです」

「そうか、俺は昼まで少し出てくるからここで好きに過ごしててくれ。それで急で悪いんだがご両親は今日家にいる?」

「土曜なので、家にいます」

「良かった、昼に挨拶に行くからそのつもりでいてくれ」

「挨拶…?」

「美夜と結婚を前提に付き合いたい、と挨拶しに行く」

「あ、挨拶!?き、気が早くないですか!」

恋人?になったと思ったら次は結婚。確かに結婚しないかとは言われた。だがこれはいくらなんでも早すぎる。

「早くない、君は魅力的だから外堀を埋めないと俺が安心できない。変な虫がつくかもしれないからな」

「…私に魅力なんて」

皆まで言う前に鼻を摘まれた。カイが不服そうに、ムッとしている。

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