海辺で拾った美男子は住所不定無職!?養っていたら溺愛されました


「おはよ。灯ちゃん」

 目覚めると、聡さんが片肘をついて私を見つめていた。朝日に包まれ輝きを増した聡さんは、非常にまぶしい。まぶしすぎて目に毒だ。ちょっとだけ垂れ目なきゅるるんとした瞳が、可愛すぎて卒倒しそう。

 起きた瞬間から、そんな猟奇的で危険な大型犬、改め寝起きで色気ダダ漏れな聡さんに微笑まれる。恋愛初心者の私には何もかもが新鮮で戸惑うことばかりだ。

「お、おは、よう、ございま、す……?」
「ふふっ。灯ちゃん寝ぼけてる?」
「起きてます! でも、なんかその、恥ずかしくて」
「うん、俺も」

 思わず手で覆って隠した顔を、そっと暴かれて、ふわりと羽が舞い落ちるかのように唇が重ねられた。

「!」
「恥ずかしい、けど、嬉しい」

 にっこり笑うと、ちょっとくしゃりとする顔がずるい。垂れ目がさらに下がって、カッコいいのに可愛くなるのはずるい。こんなに素敵な人に恋をしない女なんているんだろうか。これは反則だ。狡くて悪い男だ。

 昨夜、彼と肌を重ねて、少しだけ彼に近づけた気がした。私をただ、慰めるためだけだったとしても、嬉しかったし、幸せだった。

 心の中で麻美に謝る。ごめん、私、この人を好きになってしまった。
 もしかしたら金銭目的のヒモ男かもしれないし、これから怪しい闇バイトに勧誘されるかもしれない。明日になったら銀行の通帳と印鑑が消えてるかもしれない。

 でも、それでもいい。

「聡さん」
「んー?」
「ありがとう」
「うん?」
「ふふっ」

 今、この時、この人が与えてくれた、教えてくれた温もりを覚えていられたら。思い出にして生きていってもお釣りがきそう。それくらい、心の底にあった何かが満たされていた。
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