転生したら出オチで事件を解決した話
「君がマローネの前世という話、案外俺の方がよく理解しているんじゃないかな。君は以前のマローネと自分が別人のようにいうけれど、俺が思うに前世というのはその通りで、やっぱり君だってマローネなんだ」
頬杖をついたロキシウスが、小さな子に言い聞かせるような口調で話を続ける。彼のもう片手はいつの間にか、テーブルにあった私の手に重ねられていた。
ロキシウスに直接触れている手が気になるのに、それ以上に彼の真剣な眼差しから目が離せない。
「俺が君の前世の話をすぐに信じられたのは、俺を見る君の目が変わらなかったから。前世の君になったというのに、同じだったんだ。やっぱり俺を好きだという目で見てくる君を、俺はまた好きになってしまった」
「あ……」
ロキシウスの愛の告白に、私は今度は目を瞠った。
同時に、彼が言った「俺の方がよく理解している」という台詞の意味を理解する。
私は、マローネの前世にあたる人物なわけで……。
(前世ということは、別人じゃない。遠い過去の『私』なんだ)
そして、マローネは今の『私』。
マローネ・レッツェ。伯爵令嬢であり、ロキシウス・カイデン侯爵令息の婚約者。
ロキシウスのことが大好きで――大好きだと口にすることが許される立場。
「‼」
『私』について整理していた私は、改めて知った自分の立場にハッとなった。
前世の話をしたとき原作に出てくる情報は、ほぼほぼ伝えたと思う。けれど、そのとき私の中ではロキシウスはヒロインの恋人で。また、今日ここに来るまでは『マローネ』の恋人だった。
(でもそのマローネが私だというなら、実際に言っていいのでは? 大好きだと、本当に言ってしまっていいのでは⁉)
逸る気持ちに引き摺られてか、私は気づけば身を乗り出していた。
「あのっ、好きです! 大好きです‼」
さらに「大大大好きです!」と続けようとして、慌てて口を噤む。
ロキシウスが呆気に取られた顔で私を見ていたことに、ギリギリ気づけたから。とはいえ、この場合はギリギリアウトの方である。
「えっ……と」
唐突過ぎた。脈絡がなさ過ぎた。突き刺さる視線に今すぐ逃げ出したい。
私はひとまず、素知らぬ顔で乗り出していた身体を元に戻した。
いや、戻そうとした。
ロキシウスの頬杖にしていた方の手が私の頬に触れたことで、それは阻まれた。
「これは俺の落ち度だ。大事なことを忘れていた」
「……っ」
ロキシウスの指が私の頬を撫でる。
重なったままだった手が、優しく握られる。
それから彼はいつぞやのように、恋愛小説の挿絵並みに良いアングルで柔らかに微笑んだ。
「愛しい人。どうかもう一度、俺の恋人になっていただけませんか?」
頬杖をついたロキシウスが、小さな子に言い聞かせるような口調で話を続ける。彼のもう片手はいつの間にか、テーブルにあった私の手に重ねられていた。
ロキシウスに直接触れている手が気になるのに、それ以上に彼の真剣な眼差しから目が離せない。
「俺が君の前世の話をすぐに信じられたのは、俺を見る君の目が変わらなかったから。前世の君になったというのに、同じだったんだ。やっぱり俺を好きだという目で見てくる君を、俺はまた好きになってしまった」
「あ……」
ロキシウスの愛の告白に、私は今度は目を瞠った。
同時に、彼が言った「俺の方がよく理解している」という台詞の意味を理解する。
私は、マローネの前世にあたる人物なわけで……。
(前世ということは、別人じゃない。遠い過去の『私』なんだ)
そして、マローネは今の『私』。
マローネ・レッツェ。伯爵令嬢であり、ロキシウス・カイデン侯爵令息の婚約者。
ロキシウスのことが大好きで――大好きだと口にすることが許される立場。
「‼」
『私』について整理していた私は、改めて知った自分の立場にハッとなった。
前世の話をしたとき原作に出てくる情報は、ほぼほぼ伝えたと思う。けれど、そのとき私の中ではロキシウスはヒロインの恋人で。また、今日ここに来るまでは『マローネ』の恋人だった。
(でもそのマローネが私だというなら、実際に言っていいのでは? 大好きだと、本当に言ってしまっていいのでは⁉)
逸る気持ちに引き摺られてか、私は気づけば身を乗り出していた。
「あのっ、好きです! 大好きです‼」
さらに「大大大好きです!」と続けようとして、慌てて口を噤む。
ロキシウスが呆気に取られた顔で私を見ていたことに、ギリギリ気づけたから。とはいえ、この場合はギリギリアウトの方である。
「えっ……と」
唐突過ぎた。脈絡がなさ過ぎた。突き刺さる視線に今すぐ逃げ出したい。
私はひとまず、素知らぬ顔で乗り出していた身体を元に戻した。
いや、戻そうとした。
ロキシウスの頬杖にしていた方の手が私の頬に触れたことで、それは阻まれた。
「これは俺の落ち度だ。大事なことを忘れていた」
「……っ」
ロキシウスの指が私の頬を撫でる。
重なったままだった手が、優しく握られる。
それから彼はいつぞやのように、恋愛小説の挿絵並みに良いアングルで柔らかに微笑んだ。
「愛しい人。どうかもう一度、俺の恋人になっていただけませんか?」