【女の事件】恨鰻（うなぎ）
第３話
（パチパチパチパチパチパチパチパチ…）
時は、午後１時半頃だった。
またところ変わって、菊間町田之尻《きくまちょうたのしり》の国道196号線沿いにあるうなぎ屋にて…
店内にある炭火焼きコンロでうなぎのかば焼きを焼いている音がひびいた。
店内に有希子《ゆきこ》の幼なじみの舘野卓《たてのすぐる》（39歳・契約社員《ケーヤク》）がいた。
この日、卓《すぐる》は梅本町《うめのもと》（松山市）で暮らしている知人の家で過ごしたあと帰宅する途中だった。
正行《まさゆき》はこの店の名物である特上のうな重がオキニであった。
お酒のしめに特上のうな重を食べたいから道を変更して…
正行《まさゆき》がそのように言うたので、卓《すぐる》は帰る道を国道11号線から国道196号線に変更した。
卓《すぐる》は、ソワソワした表情で柱についているシチズンの電波時計を見つめていた。
急いでよ…
有希子《ゆきこ》ちゃんたちがうな重を食べたいと言うてるのだよ…
有希子《ゆきこ》たち９人は３時に帰るので、２時半までに有希子《ゆきこ》の実家にうな重を届けなければならない。
それなのに、うなぎのかば焼きが焼き上がらない…
うなぎの身の中心に霜《しも》がまだついていた…
火が身の中心に届いていないので、焼き上がるのにまだ時間がかかるようだ。
そうこうして行くうちに、時計のはりが２時半になった。
卓《すぐる》は、ひどくオタつきながらつぶやいた。
早く焼いてよ…
有希子《ゆきこ》ちゃんたちが待っているのだよ…
うなぎ屋の主人は、ものすごくイラついた表情でうちわをパタパタとあおいだが、身の中心に火が通らないのでものすごく困っていた。
どうしよう…
もうすぐ３時になる…
急いでよ…
（カーン、カーン、カーン…）
ところ変わって、有希子《ゆきこ》の実家にて…
柱についているカシオの電波時計から午後３時を知らせるかねが鳴った。
酒を飲んでいた正行《まさゆき》と悠太《ゆうた》は、ぐでんぐでんに酔っていた。
ともえは、ものすごく困った声で正行《まさゆき》に言うた。
「あなた!!」
「なんだよぅ〜」
「もう３時が来たわよ〜」
「３時がどうかしたのか？」
「あなた!!有希子《ゆきこ》たちはこのあと家に帰るのよ!!」
「分かってるよ〜…だけど、舘野《たての》くんがまだ菊間にいるのだよ～」
「あなた!!」
「わしはあの店のうな重が食べたいのだよ〜」
「ちょっと待ってよ!!」
ものすごく怒った表情を浮かべているともえは、有希子《ゆきこ》に対して卓《すぐる》に電話をかけてと頼んだ。
有希子《ゆきこ》は、ラインの通話アプリをひらいたあと卓《すぐる》のライン通話アプリに電話をかけた。
（プルルル…カチャ…）
有希子《ゆきこ》は、受話器ごしにいる卓《すぐる》に対して怒った声で言うた。
「もしもし卓《すぐる》くん!!…早く帰って来てよ!!みんなが待っているわよ!!」
卓《すぐる》は、つらそうな声で言うた。
「有希子《ゆきこ》ちゃん…そんなに怒らないでよぅ～…うなぎの身の中心に火が通らないのでご主人が困っているのだよ…ご主人は一生懸命になってかば焼きを焼いているのだよ…まだ４人前しかできてないのだよ…」
「あとどれくらいかかるのよ!!…卓《すぐる》くん!!泣きそうな声で言わないでよ!!大の男がおかしいわよ!!あとどれくらいかかるのか答えなさい!!」
「今、つぎの４人分を焼いているのだよ…炭火焼きは時間がかかるのだよ…」
「フン、知らないわよ!!男のくせにメソメソ泣く卓《すぐる》くんなんかキライ!!」
（ガシャーン!!）
思い切りブチ切れた有希子《ゆきこ》は、電話をガシャーンと切ったあと両手で髪の毛を思い切りかきむしりながらイラついた。
真代《まよ》は、ものすごく困った表情で有希子《ゆきこ》に言うた。
「どうしたのよ？」
「卓《すぐる》くんがメソメソ泣きながら言うたから『キライ!!』と言うたのよ!!」
「有希子《ゆきこ》さん…」
「卓《すぐる》くんは女々しいからキライなの!!」
困ったわね…
真代《まよ》は、困った声でともえに言うた。
「奥さま〜」
「どうしたの？」
「すみませんけど、家で悠馬《ゆうま》のお友だちたちが待っているのです…」
「それじゃあうなぎはどうするのよ？」
「うなぎはまたの機会にします…あの…悠馬《ゆうま》のお友だちたちの親御《おや》がもうすぐ晩ごはんとおふろの支度を始めるのですよ〜」
ともえは、やる気のない表情で『分かってるわよ〜』と答えたあと『もうすぐ舘野《たての》くんがうなぎを持ってここへ来るから…』と言うて待ってほしいとたのんだ。
この時、時計のはりは午後３時20分になっていた。
卓《すぐる》が梅本町《うめのもと》で暮らしている知人の家を出発したのは正午前だった…
その直後に、正行《まさゆき》が卓《すぐる》に道を変更してほしいと頼んだ…
その後、松山市の小坂交差点から環状線を経由して国道196号線に向かった…
うなぎ屋に着いたのは、１時15分頃だった…
それから２時間以上が経過したが、思わぬアクシデントが生じた…
そのせいで、有希子《ゆきこ》たちが帰宅することができなくなった…
悠馬《ゆうま》の友人たち４人に対して『お墓参りが終ったらすぐに帰る…』と有希子《ゆきこ》は言うた…
それなのに、正行《まさゆき》のわがままのせいで帰ることができなくなった…
いつまで人を待たすのよ…
有希子《ゆきこ》たち９人家族はよりし烈なイライラを高めた。
ともえは、ひとりでオロオロオロオロオロオロオロオロオロオロオロオロ…としていた。
その頃であった。
有希子《ゆきこ》から留守番を頼まれた友人たち４人は、ものすごく不安な表情で柱についているカシオの電波時計を見つめていた。
時計のはりは、あと５分で夕方４時になる…
それなのに、有希子《ゆきこ》たち９人が帰って来ない…
おうちに帰りたい…
炊きたてごはんを食べたい…
炊きたてごはんの上に焼きたてのお肉をのせたものが食べたいよぅ…
おとーさんとおふろに入りたいよ…
悠馬《ゆうま》の友人たちは、今にも声をあげて泣きそうになった。
しかし、近所の人たちに知られることが怖いのでガマンした。
泣きたくても泣けない…
どうすればいいの？
おうちに帰りたいよぉ〜
時は、午後１時半頃だった。
またところ変わって、菊間町田之尻《きくまちょうたのしり》の国道196号線沿いにあるうなぎ屋にて…
店内にある炭火焼きコンロでうなぎのかば焼きを焼いている音がひびいた。
店内に有希子《ゆきこ》の幼なじみの舘野卓《たてのすぐる》（39歳・契約社員《ケーヤク》）がいた。
この日、卓《すぐる》は梅本町《うめのもと》（松山市）で暮らしている知人の家で過ごしたあと帰宅する途中だった。
正行《まさゆき》はこの店の名物である特上のうな重がオキニであった。
お酒のしめに特上のうな重を食べたいから道を変更して…
正行《まさゆき》がそのように言うたので、卓《すぐる》は帰る道を国道11号線から国道196号線に変更した。
卓《すぐる》は、ソワソワした表情で柱についているシチズンの電波時計を見つめていた。
急いでよ…
有希子《ゆきこ》ちゃんたちがうな重を食べたいと言うてるのだよ…
有希子《ゆきこ》たち９人は３時に帰るので、２時半までに有希子《ゆきこ》の実家にうな重を届けなければならない。
それなのに、うなぎのかば焼きが焼き上がらない…
うなぎの身の中心に霜《しも》がまだついていた…
火が身の中心に届いていないので、焼き上がるのにまだ時間がかかるようだ。
そうこうして行くうちに、時計のはりが２時半になった。
卓《すぐる》は、ひどくオタつきながらつぶやいた。
早く焼いてよ…
有希子《ゆきこ》ちゃんたちが待っているのだよ…
うなぎ屋の主人は、ものすごくイラついた表情でうちわをパタパタとあおいだが、身の中心に火が通らないのでものすごく困っていた。
どうしよう…
もうすぐ３時になる…
急いでよ…
（カーン、カーン、カーン…）
ところ変わって、有希子《ゆきこ》の実家にて…
柱についているカシオの電波時計から午後３時を知らせるかねが鳴った。
酒を飲んでいた正行《まさゆき》と悠太《ゆうた》は、ぐでんぐでんに酔っていた。
ともえは、ものすごく困った声で正行《まさゆき》に言うた。
「あなた!!」
「なんだよぅ〜」
「もう３時が来たわよ〜」
「３時がどうかしたのか？」
「あなた!!有希子《ゆきこ》たちはこのあと家に帰るのよ!!」
「分かってるよ〜…だけど、舘野《たての》くんがまだ菊間にいるのだよ～」
「あなた!!」
「わしはあの店のうな重が食べたいのだよ〜」
「ちょっと待ってよ!!」
ものすごく怒った表情を浮かべているともえは、有希子《ゆきこ》に対して卓《すぐる》に電話をかけてと頼んだ。
有希子《ゆきこ》は、ラインの通話アプリをひらいたあと卓《すぐる》のライン通話アプリに電話をかけた。
（プルルル…カチャ…）
有希子《ゆきこ》は、受話器ごしにいる卓《すぐる》に対して怒った声で言うた。
「もしもし卓《すぐる》くん!!…早く帰って来てよ!!みんなが待っているわよ!!」
卓《すぐる》は、つらそうな声で言うた。
「有希子《ゆきこ》ちゃん…そんなに怒らないでよぅ～…うなぎの身の中心に火が通らないのでご主人が困っているのだよ…ご主人は一生懸命になってかば焼きを焼いているのだよ…まだ４人前しかできてないのだよ…」
「あとどれくらいかかるのよ!!…卓《すぐる》くん!!泣きそうな声で言わないでよ!!大の男がおかしいわよ!!あとどれくらいかかるのか答えなさい!!」
「今、つぎの４人分を焼いているのだよ…炭火焼きは時間がかかるのだよ…」
「フン、知らないわよ!!男のくせにメソメソ泣く卓《すぐる》くんなんかキライ!!」
（ガシャーン!!）
思い切りブチ切れた有希子《ゆきこ》は、電話をガシャーンと切ったあと両手で髪の毛を思い切りかきむしりながらイラついた。
真代《まよ》は、ものすごく困った表情で有希子《ゆきこ》に言うた。
「どうしたのよ？」
「卓《すぐる》くんがメソメソ泣きながら言うたから『キライ!!』と言うたのよ!!」
「有希子《ゆきこ》さん…」
「卓《すぐる》くんは女々しいからキライなの!!」
困ったわね…
真代《まよ》は、困った声でともえに言うた。
「奥さま〜」
「どうしたの？」
「すみませんけど、家で悠馬《ゆうま》のお友だちたちが待っているのです…」
「それじゃあうなぎはどうするのよ？」
「うなぎはまたの機会にします…あの…悠馬《ゆうま》のお友だちたちの親御《おや》がもうすぐ晩ごはんとおふろの支度を始めるのですよ〜」
ともえは、やる気のない表情で『分かってるわよ〜』と答えたあと『もうすぐ舘野《たての》くんがうなぎを持ってここへ来るから…』と言うて待ってほしいとたのんだ。
この時、時計のはりは午後３時20分になっていた。
卓《すぐる》が梅本町《うめのもと》で暮らしている知人の家を出発したのは正午前だった…
その直後に、正行《まさゆき》が卓《すぐる》に道を変更してほしいと頼んだ…
その後、松山市の小坂交差点から環状線を経由して国道196号線に向かった…
うなぎ屋に着いたのは、１時15分頃だった…
それから２時間以上が経過したが、思わぬアクシデントが生じた…
そのせいで、有希子《ゆきこ》たちが帰宅することができなくなった…
悠馬《ゆうま》の友人たち４人に対して『お墓参りが終ったらすぐに帰る…』と有希子《ゆきこ》は言うた…
それなのに、正行《まさゆき》のわがままのせいで帰ることができなくなった…
いつまで人を待たすのよ…
有希子《ゆきこ》たち９人家族はよりし烈なイライラを高めた。
ともえは、ひとりでオロオロオロオロオロオロオロオロオロオロオロオロ…としていた。
その頃であった。
有希子《ゆきこ》から留守番を頼まれた友人たち４人は、ものすごく不安な表情で柱についているカシオの電波時計を見つめていた。
時計のはりは、あと５分で夕方４時になる…
それなのに、有希子《ゆきこ》たち９人が帰って来ない…
おうちに帰りたい…
炊きたてごはんを食べたい…
炊きたてごはんの上に焼きたてのお肉をのせたものが食べたいよぅ…
おとーさんとおふろに入りたいよ…
悠馬《ゆうま》の友人たちは、今にも声をあげて泣きそうになった。
しかし、近所の人たちに知られることが怖いのでガマンした。
泣きたくても泣けない…
どうすればいいの？
おうちに帰りたいよぉ〜
