騙されて全てを奪われかけたけれど、思いのほか過保護な弁護士と敏腕CEO の力で解決 しそうです? ~強面CEO は甘い物と可愛いものがお好き~
6.まさかの大事件でした
かび臭い匂いに気づいて瞼を開くと、最悪な目覚めが待っていた。
手足は縛られているし、腹部はなんだかジンジンする。状況的に最悪なのだけれど、さらに絶望的になったのは、窓から見える景色は森の中だと気づいたことと、この建物が古びたホテル跡地だということ、そして私以外に拉致られた人がいたことだ。
──って、鈴本さん、中村さん!? 従業員二人も拉致していたなんて!
二人に声を掛けようとしたタイミングで、足音と笑い声が聞こえてきた。
「あーあ、もう少し金を貯めてから、高飛びしたかったのに……」
「麗奈と大雅が下手を打たなければ、もっとはやく大金が手に入ったんだ。お前らが指示を無視して婚姻届を持って行ったのが始まりだからな!」
「彩葉が不受理申請しているとは、思わないじゃないか!」
「そうよ!」
「そうやって一時の感情で脅して、財産もらおうなんて甘すぎんだよ」
「うっ……私じゃないわ、大雅のせいよ」
「えー、俺のせいかよ? 彩葉は抜けているお人好しだったから、脅せばイケるって思ったのに……なんだよ、あの悪魔みたいな弁護士。俺たちの本名までバレているし、余罪まで筒抜けってヤバい」
「弁護士が出てきた時点で、勝ちの目は消えた。あとは素早く撤退だ。ったく……この土地は人の入れ替わりが激しいから、もっと稼げると思ったんだがな」
話し声からして三人。一人は聞いたことがない。
黒いスーツ服の男は、大雅と麗奈に指示を出しているし、会話からもこの男が神堂先生の言っていたメンバーの頭脳なのだろう。
起きているとバレたら面倒そうなので、気絶したフリをしつつ、耳をそばだてて会話を盗み聞く。
「取引の時間は?」
「もう間も無くだ。店員の女二人と、対象の女の計三人を引き渡した後で金の配分をする。……が、今回はドジったお前たちの失態が多いから、後処理代を差っ引いておく」
「げえ!? それはないだろう! 俺はこの二年結構頑張ったんだけど?」
「私だって!」
「それで失敗していたら意味がないだろうが。……たっく。ほとぼりが冷めるまでそれぞれ他国で暮らせよ」
「はーい」
「はあ、日本食が食べられる国ならいいんだけど」
引き渡すって……絶対に嫌な予感しかしない。
それに高飛びって、逃げる気満々じゃない。私以外にも被害者がたくさんいるのに、罪を償わずに逃げるつもり?
なんで、そんなことができるの。この後に及んでも悪びれる様子もなく、自分たちの保身しか考えていないなんて……。この人たちを野放しにしたら、私と同じような被害者が増える。それだけは……なんとか外部と連絡を……。
そう思っても、手足は縛られているし、口も塞がれている。
手か足の縄を解こうとしている間に、黒塗りの車が数台止まったのが欠けた窓から見えた。降りてきた人物は身なりも良さそうな──というか、強面の男性の中に何故かリュカさんの姿があった。
どうして……リュカさんが?
アタッシュケース二つ分を差し出して交渉している間に、リュカさんを含めた数人が私たちの元に歩み寄る。
どうしてリュカさんが?
人身売買に関わっている?
私の傍にいたのも、油断させるため?
ううん、そんなことない。だって──。
手足は縛られているし、腹部はなんだかジンジンする。状況的に最悪なのだけれど、さらに絶望的になったのは、窓から見える景色は森の中だと気づいたことと、この建物が古びたホテル跡地だということ、そして私以外に拉致られた人がいたことだ。
──って、鈴本さん、中村さん!? 従業員二人も拉致していたなんて!
二人に声を掛けようとしたタイミングで、足音と笑い声が聞こえてきた。
「あーあ、もう少し金を貯めてから、高飛びしたかったのに……」
「麗奈と大雅が下手を打たなければ、もっとはやく大金が手に入ったんだ。お前らが指示を無視して婚姻届を持って行ったのが始まりだからな!」
「彩葉が不受理申請しているとは、思わないじゃないか!」
「そうよ!」
「そうやって一時の感情で脅して、財産もらおうなんて甘すぎんだよ」
「うっ……私じゃないわ、大雅のせいよ」
「えー、俺のせいかよ? 彩葉は抜けているお人好しだったから、脅せばイケるって思ったのに……なんだよ、あの悪魔みたいな弁護士。俺たちの本名までバレているし、余罪まで筒抜けってヤバい」
「弁護士が出てきた時点で、勝ちの目は消えた。あとは素早く撤退だ。ったく……この土地は人の入れ替わりが激しいから、もっと稼げると思ったんだがな」
話し声からして三人。一人は聞いたことがない。
黒いスーツ服の男は、大雅と麗奈に指示を出しているし、会話からもこの男が神堂先生の言っていたメンバーの頭脳なのだろう。
起きているとバレたら面倒そうなので、気絶したフリをしつつ、耳をそばだてて会話を盗み聞く。
「取引の時間は?」
「もう間も無くだ。店員の女二人と、対象の女の計三人を引き渡した後で金の配分をする。……が、今回はドジったお前たちの失態が多いから、後処理代を差っ引いておく」
「げえ!? それはないだろう! 俺はこの二年結構頑張ったんだけど?」
「私だって!」
「それで失敗していたら意味がないだろうが。……たっく。ほとぼりが冷めるまでそれぞれ他国で暮らせよ」
「はーい」
「はあ、日本食が食べられる国ならいいんだけど」
引き渡すって……絶対に嫌な予感しかしない。
それに高飛びって、逃げる気満々じゃない。私以外にも被害者がたくさんいるのに、罪を償わずに逃げるつもり?
なんで、そんなことができるの。この後に及んでも悪びれる様子もなく、自分たちの保身しか考えていないなんて……。この人たちを野放しにしたら、私と同じような被害者が増える。それだけは……なんとか外部と連絡を……。
そう思っても、手足は縛られているし、口も塞がれている。
手か足の縄を解こうとしている間に、黒塗りの車が数台止まったのが欠けた窓から見えた。降りてきた人物は身なりも良さそうな──というか、強面の男性の中に何故かリュカさんの姿があった。
どうして……リュカさんが?
アタッシュケース二つ分を差し出して交渉している間に、リュカさんを含めた数人が私たちの元に歩み寄る。
どうしてリュカさんが?
人身売買に関わっている?
私の傍にいたのも、油断させるため?
ううん、そんなことない。だって──。