Lecker
「ファーデン様は死にかけの僕を助けてくれただけです。何も悪いことなんてしていない!」

「しかし法を破った。許されることではない」

シュリュッセルが必死に「違います!」と否定するものの、モーントは手のかかる子どもを相手にしているかのように面倒くさそうな顔を浮かべる。そして、先ほどから口を閉ざしているラントカルテに目配せした。

「モーント様、承知致しました」

ラントカルテはモーントに頭を下げ、小さく呪文を唱えた。するとシュリュッセルの体の下に紫の光を放つ魔法陣が現れる。

「人間よ。二度と魔界へ来るな」

冷ややかな目でラントカルテはそう言い、紫の光が集まっていく杖をシュリュッセルに向ける。魔法など使えないシュリュッセルにはこれから何が起こるかなどわからない。しかし、よくないことが起こるということだけは理解できた。

「やめて……!!」

シュリュッセルが大声で叫んだその時だった。彼の目の前で大きな爆発が起こる。それと同時にシュリュッセルを拘束する鎖や魔法陣が消えた。
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