Lecker
「おはようございます、ファーデン様」

シュリュッセルたち三人が挨拶をすると、ファーデンは「おはよう」と微笑む。赤い髪にエメラルドのような緑の目を持った彼はシュリュッセルの作った料理を見て、目を輝かせる。

「今日もおいしそうだ。シュー、ありがとう」

「こちらこそ毎日食べていただいて、ありがとうございます」

テーブルに料理が並ぶ。自分の席に座ったゾンネが「シューも座って」と促した。ヴァイスもすでに座っている。シュリュッセルが椅子に座ると、全員が自然と手を合わせた。

「いただきます」

穏やかな食事の時間が始まる。生きていくのに必要で当たり前の時間だ。しかしその当たり前の時間にシュリュッセルは幸せを感じている。

ここは魔界。人ならざる者たちが住まう世界。その世界の魔王の一人であるファーデンの屋敷で人間のシュリュッセルはシェフとして働いている。

魔王のファーデン。魔女のゾンネ。エルフのヴァイス。人間のシュリュッセル。

「おいしい」という言葉が飛び交う中、食事の時間は進んでいった。
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