Lecker

しかし、まともに食べることなどできず、空腹と疲労でシュリュッセルは倒れてしまった。そんな彼に話しかけてくれたのがファーデンだったのだ。

魔界に着いた当初、ファーデンはシュリュッセルに掃除の仕事をしてほしいと言っていた。しかし屋敷に着いてゾンネとヴァイスが作ったスープを見て、シュリュッセルは顔を引き攣らせる。皿に入れられたスープは何故かどす黒く、異臭を放っていたためである。

そこで伯爵家で厨房で働いていたシュリュッセルがスープを作り直したところ、三人に驚くほど褒められ、ファーデンの屋敷のシェフとなったのである。

しかし、人間がいると知られるとファーデンの立場が危ういため、シュリュッセルが街へ食材を買いに行くことはない。庭で野菜を育て、きのこは森で取り、肉や魚はゾンネやヴァイスに買って来てもらう。

「シュー、夕飯のリクエストしていいかな？」

朝ご飯を全員食べ終わり、シュリュッセルが食器を下げてシンクで洗っていると、ファーデンが厨房にやって来て言う。シュリュッセルは洗い物の手を止め、「何でしょうか？」と訊ねた。