Lecker
ファーデンたちの笑顔を思い浮かべながらシュリュッセルが歩いていた時だった。背後で何者かが落ち葉などを踏み締める音がした。

屋敷の誰かが森に来たのか、そう思って振り返ったシュリュッセルは驚いて固まってしまう。数百メートル離れて立っているのは、彼の全く知らない同い年くらいの少年の顔だった。黒く長めの髪を束ね、シュリュッセルの瞳よりももっと暗い青が彼を睨むように見つめる。

逃げなくては、そう思いシュリュッセルが走り出すよりも前に少年は着ているローブの中から杖を取り出し、それをシュリュッセルに向ける。

「ジリエーザ!」

少年の杖の先から黒い光が飛び出す。銃弾のように早い光はシュリュッセルに当たり、彼は一瞬にして吹き飛ばされる。近くの木に体を強く打ち付け、痛みに顔を顰めた。

「うっ……」

体を起こそうとしたものの、体が動かないことにシュリュッセルは気付いた。目を開けると、自身の手足に鎖が巻き付いているのが見えた。

「君は誰?いきなりどうしてこんなことをするの?」
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