Lecker
シュリュッセルは自分を捕らえた少年を見上げ、訊ねる。しかし少年は無表情のまま何も答えなかった。その時、「捕らえたか」と低い声がした。すると少年が跪き、口を開く。

「はい!こちらが例の人間にございます!」

シュリュッセルの前に赤い髪の男性が姿を見せる。豪華な衣装を身に纏い、その頭にはファーデンのような角があった。

「あなたは誰ですか?」

「私はモーント。魔界を治める魔王の一人だ。こっちは魔法使いのラントカルテ。私の部下だ」

モーントはシュリュッセルに近付く。彼は逃げようと身を捩るものの、手足に巻き付いた鎖がそれを許さない。モーントは困ったように笑った。

「怖がらせてすまない。別に君に危害を加えたいわけではないんだ」

「では、何が目的なんですか?」

「人間を魔界に連れて来るのは魔王と言えど御法度だ。君を人間界に戻した後、ファーデンには相応の罰を与えなくてはならない」

「やめてください!!」

シュリュッセルは大声を上げる。人間界に彼の居場所はない。居場所のなかったシュリュッセルを救ったのはファーデンだ。
< 9 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop