無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
透子に手を握られ、春音の気持ちが落ち着いてきた頃、再び処置室のドアがノックされ、女医が顔を出した。

「森川さん、警察の方が話を訊きたいそうだけど、大丈夫?」

「はい」

女医に促され、二人の女性警官が姿を見せると、透子は

「外にいるわね」

そう言って、入ってきた女性警察官に一礼し処置室を出て行った。

「治療早々大変恐縮ですが、少し話をお聞かせください」

「はい」

春音がそう答えると、もう一人の女性警察が、持っていたバッグからタブレットを取り出した。

氏名、住所、勤務先、今日一日の行動等、事細かに質問され、春音は丁寧に答えた。

「お怪我をされているのに、お答えくださってありがとうございました」

女性警官は丁寧に頭を下げた。

いったい何人に同じような質問をしているのだろうか? 中には面倒くさがる人や、威圧的な人もいるだろう。答える側より、寧ろ訊ねる警官の方が大変だろうなと、春音は同情した。

『でも、あの男性(ひと)はどうだろう?きっと問答無用で答えさせるんだろうな』

ふと男性の氷のような冷たい眼が浮かんだ。

「あのぅ…… 犯人を捕まえた男性は……」

春音は無意識に質問していた。
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