無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
「県警本部捜査一課の者です。彼がどうかしましたか?」

「いいえ、別に…… ただ……」

「もしかして何か言われましたか?」

「え⁉︎」

「うちの暴君が何か失礼を?」

タブレットを操作していた警官から訊かれ、春音は驚き目を見開いた。

『暴君!』

「その反応、図星ですね?」

「え、えっと…… 少し怖かっただけです」

「すみません、彼、いつもああなんです。仏頂面というかなんというか、言葉もきついし、感情を表に出さないんです。誰も笑ったところを見たことがないんですよ」

「え⁉︎ 誰も、ですか?」

「はい。余計に怖い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」

「そんな、謝らないでください。犯人を捕まえて助けてくださったんですから」

『でも、アレンジメントは蹴り飛ばさなくてもよかったじゃない!暴君め!」

春音は心の中で愚痴をこぼしたのだった。


聴取を終え警官が出ていくと、すぐに透子が部屋に入って来た。

「春音ちゃん、今日はうちにいらっしゃい」

「え?」

「怖い思いをしたんだもの、独りにならない方がいいと思うの」

「いいんですか?」

「もちろんよ。一度戻って仕事してくるから、春音ちゃんはこのままここで休んでいてね。後で迎えにくるわ」

「ありがとうございます」

透子の優しさに、春音の心はじわりと温かくなった。
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