無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
透子が春音を迎えに来た後、潤人が運転する車で透子のマンションへ向かった。
潤人はエントランス前で二人を降ろすと、

「お疲れさま。ゆっくり休めよ」

そう言って、爽やかな笑顔を残しマンションを後にした。

透子が夕飯を作ってくれると言うので、春音は食欲がないと断ったが、少しでも食べた方がいいとお粥を作ってくれた。

『お粥って、こんなに美味しかったんだ』

食欲がないと言いながら、春音は見事に完食した。

「ごちそうさまでした。凄く凄く美味しかったです」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。私はキッチンを片付けるからテレビでも見てて」

「私がやります!」

「いいのよ、春音ちゃんはソファーに座ってなさい」

透子が春音をソファーに座らせ、大型テレビのスイッチを入れると、タレントのぶらり旅という番組をやっていた。
田舎をまわり、田植えや畑仕事の手伝いをするといったほのぼのとした内容だった。
思いのほか楽しくて、春音は見入ってしまっていたが、30分の番組だったようであっという間に終わってしまった。

そしてニュース番組へと切り替わる。

《今日最初のニュースです。午後14時頃、けやき通り沿いのマンションで、男が交際相手の女性を鋭利な刃物で刺し、逃走するといった事件が発生しました。女性は腹部を刺され重体です。逃走の際、男は女性を人質に取り抵抗を試みましたが、駆けつけた警官に取り押さえられ、殺人未遂の現行犯で逮捕されましたーーーーーー》
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