無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
「湊人くん、仕事中?」

「非番です」

『敬語だ! つっけんどんな態度をとるかと思っていたのに意外だな』

そんなことを考えながら湊人を見ていると、ばっちりと目が合った。

「何?」

「え?」

「ずっとこっち見てただろ?」

「あ、いえ、すみません」

「は?」

『冷めた目で見てる。どうしよう、怖い』

助けを求めるように視線を透子に向けると、透子は何故か笑顔だった。

「湊人くん、コーヒー飲んでく?」

「いえ、俺もう行くんで」

「そう……残念だわ」

「じゃあ」

湊人は無表情のまま踵を返した。
後ろ姿が段々遠ざかっていく。その姿をぼんやりと眺めていた春音だったが、大切なことを思い出し、はっとした。

「店長、ちょっとお店を離れていいですか?」

「え?」

「私、凄く失礼な人間になるところでした! 助けてもらったのにお礼言ってません!」

「あら、それは大変! 早くいってらっしゃい」

「はい!」

春音は店を飛び出した。

『うふふっ、あの二人、案外上手くいくと思うんだけど。湊人くんの溺愛する姿が想像できてしまうのは私だけ?』

透子はニヤけてしまう顔を必死に抑えていた。
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