無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
事件のあった日から、湊人の心は乱れたままだった。
これまで抱いたことのないあらゆる感情がぶつかり合う。痛くも痒くもなかったことが、春音のことを考えると何故か痛みを伴った。
謝らなければという気持ちも芽生えた。
湊人を庇うような春音の言動が、湊人の胸中にとどめの一撃を与えたことは言うまでもない。

この時から湊人の中で、森川春音という存在が段々と大きくなっていった。


そんな湊人の気持ちを知る由もない春音は、面と向かってお礼を伝えられたことに安堵していた。
けれど、ぎゅっと胸を締め付けられた感覚は消えてくれない。

『もう、いったい何なの! でも、この感覚、前にも一度味わったことがあるような気がする……』

その答えが何なのかわからないまま、春音は仕事に戻ったのだった。
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