無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
「春音ちゃん、ちょっといいかしら」

閉店時間になり、店先で通行人の目を癒していた植物たちを店内に運び込んでいると、透子から手招きをされた。

「はい。店長どうしました?」

返事をしながら透子のもとへ寄ると、

「明後日日曜日なんだけど、話があるの。食事をしながら話したいんだけど、時間もらえないかしら。お店を閉めてからだから19時半頃なんだけど。潤人が湊人くんにも声をかけるはずよ」

「副社長とみっ」

そこまで言って慌てて言い直した。

「彼も、ですか?」

『危なかったぁ、みっくんって言うところだった! 絶対ニヤニヤされるに違いないんだから』

「ええ、四人でね」

「私は大丈夫です」

『金曜日は確か当直明けだって、みっくんは言ってた気がするな。四人で話ってなんだろう?』

深掘りすることもなく金曜日を迎えた。

場所は路地裏にあるひっそりとしたイタリアンレストランだ。仕事を終えた春音と透子は、他愛無い会話をしながら徒歩で向かった。
到着すると、奥の個室に通された。
テーブル席で、既に湊人と潤人はテーブルを挟んで座っていた。

「お疲れ」

潤人が声をかけると、湊人も「お疲れさまです」と続いた。

春音も慌てて「お疲れさまです」と会釈する。

潤人の隣には透子が、湊人の横には春音が腰掛け、春音は潤人と向かい合わせになった。

『どうしよう、緊張するな……』

頬が段々と熱を帯びていく。思考が停止しそうだ。

ほんのりと赤く染まった頬を、可愛らしい手で押さえる春音をチラリと見やった湊人はおもしろくない。

『兄貴を前になんでそんな顔するんだよ』

不機嫌を詰め込んだ表情で潤人に視線を移し、口を開いた。

「で、話って?」

「そう急かすなよ。まずは食事だ。もうコースを頼んであるから、みんな食前酒を選んでくれ。透子はオレンジジュースでいいか?」

「ええ、ありがとう」

「透子さん、ワインは飲まないんですか?」

透子は部類のワイン好きだ。てっきりワインを飲のだとばかり思っていた。

「控えることにしたのよ」

そう穏やかに答えると、優しい表情で自分のお腹に手を添えた。

「子どもができたんだ」

「「 えっ⁉︎ 」」

潤人の言葉に、春音と湊人は同時に驚きの声を上げた。

「二ヶ月よ」

透子は女神のように微笑んだ。
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