無愛想な末っ子御曹司の溢れる愛
目を覚ますと、湊人がキッチンに立ちコーヒーを淹れていた。

「おはよう、よく眠れた?」

「うん、凄くいっぱい寝ちゃった」

もう太陽が沈みかけている。

「コーヒー飲むか?ブラックだけど」

「うん、飲む。みっくん、私やるよ」

ベッドから起きあがろうとするも、身体が言うことを聞いてくれない。
悪戦苦闘している春音の身体に湊人は手を添えた。

「無理させたからな。今日は何もせず、ゆっくり休め。夕飯は俺が作るから。とりあえずコーヒーだな、ちょっと待ってろよ」

コーヒーの入ったカップを持って戻ってくると、湊人は春音の手にそっと握らせた。

「大丈夫か? 手に力入るか?」

「うん、大丈夫」

カップをそっと口に運ぶ。

「美味しい」

「そうか? よかった」

「春音、何か食べたいものはあるか? 遠慮せず言ってくれ」

「何でもいいの?」

「いいよ、何でも」

「ケーキ食べたい」

「どんなケーキだ? 生クリームのやつか? チョコレートか? チーズケーキか? チーズケーキにも色々あるよな」

「うふふっ」

春音が笑いを溢す。

「なんで笑うんだよ」

「だって、みっくん、もの凄い過保護なんだもん」

「過保護上等!」

「なにそれ」

春音はプッと吹き出した。

「甘えて欲しい。俺は思いっきり春音を甘やかしたいんだ」

「だったら、何でもお願い聞いてくれる?」

「あぁ、出来ることなら何でも聞いてやる」

「じゃあ、ケーキじゃなくて、冷凍庫にバニラアイスが入ってるから、食べさせて欲しいな」

「バニラアイスなんかあったか?」

「一昨日食べたくなって買ってきたの。後で食べようと思ってたら忘れちゃってた」

「ちょっと待ってろよ」

バニラアイスを持って戻ってきた湊人は、早速春音に食べさせた。

「んーーーーっ! 美味しい! みっくんも食べて?」

「ん! 美味いな、これ」

「でしょっ!」

満足げに笑う春音。この笑顔を自分だけのものにしたい!その感情が湊人の背中を押した。
< 42 / 47 >

この作品をシェア

pagetop