【短】果たして雨宮はアンニュイなのか
雨宮くんってさ、なんかミステリアスだよね。
アンニュイっていうの? 儚げというか物憂げというか。
噂じゃ、病弱で余命わずかな彼女がいるんだって。
あー、あのアンニュイはそういうところからきてるんだ。納得。
「皆好き勝手言うよね! あはは、ミステリアスだって。ぜーんぜんそんなことないのにね?」
放課後、窓際の席で一人雨空を見上げる雨宮を見つけたあたしは、一つ前の席に座ってニヤニヤとその顔を覗き込む。
「光莉……なんだよそれ」
「このクラスの子たち……主に女子たち、皆雨宮のこと噂してるよ? ひゅーひゅーこの人気者め~」
「うっせえ」
「『はあ、雨宮くんってクールでかっこいい♡何考えてるかわかんないところも素敵♡』……はいこちら、クラス一の美少女東川さんのお言葉です。ひひっ」
「つかまた盗み聞きかよ。趣味悪いな」
「いーの! 最近の楽しみはこれだけなんだから」
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