【短】果たして雨宮はアンニュイなのか



うーむ、言われてみればそうだったっけ。

あたしは腕を組んで記憶を辿る。


あ、思い出した。



「そーだったそーだった。あたしは念のため折り畳み傘持ってたけど、雨宮は『絶対降らねーし』とかすんごい強気で雨具一つも持ってこなかったんだよね」


「……そうだったか?」




おや、恥ずかしい昔話を蒸し返されそうだからとぼけだしたな?

あたしはにやりと笑って続ける。



「そうそう。で、結局泣きそうな顔で『傘入れてください光莉様』って頼みこんできて、相合傘で歩きましたよ遊園地」


「……」


「でも思春期男子雨宮クンは恥ずかしかったみたいで、あたしから変な距離とって肩半分濡らして、次の日風邪ひいたんだったね」


「あーもうわかった! ちゃんと思い出したからもう黙ってくれ……くそ、言わなきゃよかった」




ほら。

こうやって顔を真っ赤にして慌てる雨宮にクールな要素は微塵もない。


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