【短】果たして雨宮はアンニュイなのか
あたしは大きな声で笑って、それからふっと目を伏せた。
「楽しかったなあ、あの頃は」
今はもう、あの頃とは違う。
変わってしまった。
「ねえ雨宮」
「何だよ」
「彼女、いるの?」
「『病弱で余命わずかな彼女』か? 光莉まで信じてるのかよ」
「さすがにそれはただの噂だって知ってる」
早口で答えて、無理やり口角を上げる。
「……今だから言うけどね、あたし、あの日の相合傘すっごくドキドキしたんだ。男子と相合傘したのなんて、後にも先にもあのときだけだよ。相手が雨宮じゃなかったら、たぶん頼まれてもしてなかった」
ぎゅっと目を閉じた。
とてもじゃないけれど、雨宮の顔を見られそうにない。
「光莉……?」
あともう一歩、というところで言葉が止まってしまう。
ああ、いつもこうだ。こんなんだからあたしは……