視線の先にあるものは
それからも、橘君はぶれずに、基本的に誰と話すこともなく、時折、ぼんやり窓の外を眺めている。
サラサラとした黒髪が時折、窓からの風に揺れる。

その横顔が綺麗で、時折こっそり見惚れている。

ふと、橘君がこちらに視線を向けた。横顔を盗み見ていたことを気づかれないように慌てて視線を逸らす。
最近なぜだか、今日みたいに視線が合うことが時々ある。いつも慌ててすぐに視線を逸らしてしまうから、その後彼がどんな表情なのかみたことはないけれど。

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