視線の先にあるものは
翌日も雨だった。

自分のいる町ごと包み込んで、静けさの中に連れていってくれるみたいなしっとりした雨の日は結構好きだ。
けれど、腕の鈍痛を感じるとともに、朝から気が滅入る。

そっと長袖のパジャマめくると、右腕にできた痣がまた濃さを増していた。
梅雨入りの頃からできてきた痣は最初はうっすらとした赤色だったのに今や完全なるぶんず色で、形も大きくなっている。
まるで人の指に掴まれたあとのようだ。

痛みも最初は全く気にならず、気づかないうちにどこかにぶつけたのかな、ぐらいに思っていたのが、時々誰かに強く握られたかのように痛むことがある。雨の日は特に。

(ちょっとさすがにヤバいかも。今まで心配かけたくなくて黙ってたけど、今日は智ちゃんに相談してみよう。)
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