年下の彼はキャラメルナッツ〜NTR女子は癒しのイケメン男子との縁を再び手繰り寄せる
「ありがとう、またご馳走になっちゃった」
「俺が連れて来たんだからいーの、送ってくよ」
「彗は優しいね」

マンションの最寄り駅で降り
改札を出るとどちらからともなく手を繋ぐ

緑が多いこの地域だが、
東京の熱帯夜を涼しくするまでには至らず
それでも歩いてる途中で
湿気を帯びた空気の中に草の香りがした

マンション棟の前まで来ると

「ウチ、寄ってく?」

と、レストランで飲んだワインのせいか
いつもより酔いが回っている沙夜が
少し上目遣いで彗に言った

「…良いの?」

「…良いよ」

2人は繋いだ手を離すことなく
エレベーターで11階に上がった

沙夜は鍵を開け、玄関に来客用のスリッパを置くと

「上がって、今、お茶入れるね」

と言って、帽子とバッグを置き
洗面所で手を洗うと戻ってきて
冷房のリモコンスイッチを入れた

彗は部屋に入ると、沙夜と入れ替わりに
手を洗い、ソファに腰を下ろした

「あんまり部屋をジロジロ見ないで〜
越してきたばかりで、まだ段ボール全部開けてないの」

「見てない…けど、この部屋、1LDKだよね」

「うん、URの1〜2人用」

「なんか、冷蔵庫だけ、やけに立派だね」

「れ、冷蔵庫?」
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