雨、時々、恋と猫 〜無自覚なイケメン獣医さんに愛されています〜
そのお礼の食事の際に、私を恋人だと紹介して、お見合いを回避できればという事だった。
「でも、この話は気にしないで下さいね! お礼の食事の件も、藍沢さんが気乗りしない場合は気軽に断って頂いて、その場合は別のお礼を考えますので」
音岐さんが苦笑しながら言葉を続ける。
「この院を開業するにあたり僕の実家で色々あって……。恐らくこのお見合いの話も、叔母は間に入っているだけで、実家の母が強引に話を進めているのだと思います」
お話を聞く限り、ご両親とはあまり良好な関係ではないのかもしれない。
「あの、上手く務まるか分かりませんが……。その日だけでいいなら、私でよければ恋人の振りを頑張ってみます」
困っている様子の音岐さんを見て、思わずそう切り出していた。彼のお陰で私は透さんにしっかり別れを告げる事ができた。
少しでも何か音岐さんの力になれるのなら、応えたいと思ったのだ。
そんな私の返答に、スタッフの小林さんが嬉しそうに拍手している。
こうして、私は音岐さんの叔母様と会う事になった。
そしてその人が、私も普段から深く関わりのある人だと知る事になるのだった。