雨、時々、恋と猫 〜無自覚なイケメン獣医さんに愛されています〜

第9話:社内にバレた二人の本性


 お昼休憩が終わり、午後の仕事を始めて三十分が過ぎた頃に美沙からメールが入った。

【話があるからエントランスのブースまで来て】

 今日は午後二時に、開発部を交えた本格的な打ち合わせがある。ここには、凛子副社長も涼介さんも参加する事になっているけれど、副社長は今、社長の予定もカバーしながら動いている為、外出からの帰社時刻が二時ギリギリになるとの連絡が入っていた。

 その打ち合せまであと三十分。
 どうしようか迷っていると、美沙から連続でメールが来て私は仕方なく一階へと向かった。

 打ち合せブースまで行くと透さんの姿もあり、二人が横に並んで座っている。まるで圧迫面接を受けるかのような心持ちで、私は息苦しさを抱えてその向かい側へ腰を下ろした。

「話って何?」

 恐る恐る問い掛けた私に、美沙が冷たく言い放つ。


「さっさと辞めてくれない?」


 酷い事を言われるに違いないと予想はしていたけれど、ここまではっきりとした言葉を向けられるとは思わず、返した言葉の語尾が小さく掠れた。

「まだ、辞める気はないよ。新商品の開発が始まったところ、だから……」

 せめて試作の完成までは頑張りたい。これから携わる各部の人達、凛子副社長、そして涼介さんと一緒に。
 けれど今度は透さんに、その言葉を嘲笑しながら否定された。
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