雨、時々、恋と猫 〜無自覚なイケメン獣医さんに愛されています〜

「たった一回企画が通っただけで何言ってんだよ。むしろ(かなめ)になるのは開発と、その後の売上に関わる俺ら営業なんだよ。真面目ちゃんが勘違いして、いつまでも『私の企画です』って顔で必死になってる姿がマジで恥ずかしいから。お前は地味に、俺の手伝いだけ黙ってしてればいいんだよ」

 その言葉に胸の奥がギュッとなった。
 強くならなきゃと思うのに、私なんかが一生懸命になるのは、やっぱり恥ずかしい事なのではないかと思えてくる。

「透さんの言う通りよ。佑香が企画の発案者ってだけで、後は他部署の人達の仕事なんでしょ? 調子に乗って張り切っちゃって、恥ずかしいわね。音岐先生だって仕事だから佑香に気を使ってるの。これだからモテた経験がない地味子って嫌なのよ。ちょっと優しくされただけですぐに勘違いしてホント恥ずかしい〜。佑香はどうせ都合のいい女なんだから、立場を(わきま)えなさいよ」

 二人が含み笑いをしながら、顔を見合わせた。


 私は──。
 そんなに恥ずかしい…………存在なの?


 思わず二人から視線を逸らして俯いた私に向かって、美沙が最初に言ったその言葉を繰り返した。



「さっさと、辞めてくれない?」



 ギリギリの所で堪えていた気持ちの糸が切れて、涙が頬をつたい落ちていく。
 泣きたくない。こんな二人の前で、泣きたくなんかないのに……。
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