雨、時々、恋と猫 〜無自覚なイケメン獣医さんに愛されています〜

「佑香、コーヒー飲む?」
「有り難うございます。私も手伝います」

 涼介さんに場所を聞いて、二人分のカップを取り出す。そして彼の隣に並んで、コーヒーメーカーのドリップが終了するのを待った。
 こんな風に涼介さんの部屋で過ごしていると、二人の想いが通じ合った事を強く実感する。隣に立つ背の高い涼介さんを見つめていると、彼が後ろから私の体を抱き締めた。

「本物の恋人になれたから、今日から君の敬語や丁寧語は禁止だよ」
「え? 急に言われても……。癖になってるから無意識に言っちゃいます」
「はい、アウト」
「今のも?」
「今のも」

 私を後ろから抱き締めたまま、耳の横で笑う涼介さんの吐息がくすぐったい。

「次、言ったら。罰ゲームにしようか」
「え? 罰ってなんですか?」

 驚いた拍子に、涼介さんの事を振り返ってまた丁寧語を使ってしまった。
 そんな私の唇に、そっと触れるだけのキスが降る。

「罰ゲームはキス」
「それじゃ私には、罰に……ならないです」

 今度は深い口付けに呼吸を奪われた。

 そのまま涼介さんに手を引かれて寝室へと向かう。ベッドの上でまた何度もキスを重ねた。
 二人のリップ音がその場に響き、触れる唇の熱さに目眩を覚える。大きな手がゆっくりと肌の上を滑り落ちていくと、羞恥と彼へのどうしようもない愛しさで胸の中がいっぱいになった。

「好きだよ」

 繰り返される愛の言葉を聞きながら、私は彼の腕の中で甘い吐息と共に瞳を伏せたのだった。

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