心を切りとるは身を知る雨
第四話 天泣
清倉の大地に流れる川。その奥には、紅葉する山々。そして、雲のない空から降る雨。虫取り網を持った男の子に、虫かごを持った男の子と手をつなぐ女の子。三人の子どもたちが、はしゃぎながら帰宅する光景。
届いたばかりのシンプルな額にその切り絵をおさめたら、ほっと息が出た。清倉に引っ越してきてから製作に取り掛かり、構図にずっと悩んでいた作品だ。やはり、子どもたちを三人にしてよかった。このバランスが永遠に続けばいいと思える。
作品を持ってアトリエを出ると、車椅子に乗るしぐれが、棚にある封筒を取ろうと手を伸ばしていた。注文が入った作品の梱包をお願いしていたのだが、作業台に置いていた封筒が足りなくなっていたようだ。
声をかけようとした未央は、足の先に力が入っているみたいにわずかに腰をあげるしぐれに気づいて、まばたきをした。
「しぐれちゃん?」
手の届いた封筒をつかんで、棚から下ろすしぐれに、ようやく声をかける。
「あっ、未央さん。封筒がなくなっちゃってたので、補充しておきますねー」
「ありがとう。それより、いま、立ち上がれそうじゃなかった?」
「そうなんですよー。最近、足の感覚があるっていうか、なんか、立てるような感じがするんですよね。実際はまだまだなんですけど」
照れ笑いするしぐれは、未央の手もとに視線を移し、車椅子を漕いでやってくる。
「新作できたんですね! 見てもいいですかー?」
「ええ、どうぞ」
カウンターの上に乗せると、しぐれは興味津々にのぞき込む。
届いたばかりのシンプルな額にその切り絵をおさめたら、ほっと息が出た。清倉に引っ越してきてから製作に取り掛かり、構図にずっと悩んでいた作品だ。やはり、子どもたちを三人にしてよかった。このバランスが永遠に続けばいいと思える。
作品を持ってアトリエを出ると、車椅子に乗るしぐれが、棚にある封筒を取ろうと手を伸ばしていた。注文が入った作品の梱包をお願いしていたのだが、作業台に置いていた封筒が足りなくなっていたようだ。
声をかけようとした未央は、足の先に力が入っているみたいにわずかに腰をあげるしぐれに気づいて、まばたきをした。
「しぐれちゃん?」
手の届いた封筒をつかんで、棚から下ろすしぐれに、ようやく声をかける。
「あっ、未央さん。封筒がなくなっちゃってたので、補充しておきますねー」
「ありがとう。それより、いま、立ち上がれそうじゃなかった?」
「そうなんですよー。最近、足の感覚があるっていうか、なんか、立てるような感じがするんですよね。実際はまだまだなんですけど」
照れ笑いするしぐれは、未央の手もとに視線を移し、車椅子を漕いでやってくる。
「新作できたんですね! 見てもいいですかー?」
「ええ、どうぞ」
カウンターの上に乗せると、しぐれは興味津々にのぞき込む。