心を切りとるは身を知る雨
その目には、イベントコーディネーターとしての経験からくるのだろう、バイヤーのような真贋を見極める鋭さが宿っている。
緊張して見守っていると、朝晴がこちらに顔を向ける。
「タイトルは?」
「あっ、札をまだつけてませんでしたね」
未央はカウンターの中へ戻ると、引き出しからタイトル用の画用紙を取り出し、筆ペンで『天泣』と記す。
「天泣ですか。それで、雲がないんですね」
カウンター越しに手もとをのぞき込んできた朝晴はそう言うと、ふたたび、天泣の前に立ち、作品を眺める。
「一見、三人の子どもたちが楽しく遊んでいますが、凪のように落ち着いた切ない作品ですね」
やはり、朝晴にはわかるのだろう。未央の心が反映された作品にある複雑さが。
「天泣って、どういう意味なんですかぁ?」
しぐれが興味を持ったように尋ねてくる。
「雲のない晴れた空から降る雨ですよ。お天気雨ともいいますね」
「へえ、晴れてるのに泣いてるんですねー。その子どもたち、楽しそうにしてるからって、悲しんでないわけじゃないって感じなのかなぁ」
しぐれの言葉にどきりとしながら、朝晴に視線を向けた。彼もまた、心をのぞこうとするかのように瞳をじっと見つめてくる。
作品に込めたものをすべて見透かされるのは、どうにも落ち着かない。未央が目をそらすと、朝晴も何も言わずに天泣から目を離す。
「次の作品も楽しみですね」
緊張して見守っていると、朝晴がこちらに顔を向ける。
「タイトルは?」
「あっ、札をまだつけてませんでしたね」
未央はカウンターの中へ戻ると、引き出しからタイトル用の画用紙を取り出し、筆ペンで『天泣』と記す。
「天泣ですか。それで、雲がないんですね」
カウンター越しに手もとをのぞき込んできた朝晴はそう言うと、ふたたび、天泣の前に立ち、作品を眺める。
「一見、三人の子どもたちが楽しく遊んでいますが、凪のように落ち着いた切ない作品ですね」
やはり、朝晴にはわかるのだろう。未央の心が反映された作品にある複雑さが。
「天泣って、どういう意味なんですかぁ?」
しぐれが興味を持ったように尋ねてくる。
「雲のない晴れた空から降る雨ですよ。お天気雨ともいいますね」
「へえ、晴れてるのに泣いてるんですねー。その子どもたち、楽しそうにしてるからって、悲しんでないわけじゃないって感じなのかなぁ」
しぐれの言葉にどきりとしながら、朝晴に視線を向けた。彼もまた、心をのぞこうとするかのように瞳をじっと見つめてくる。
作品に込めたものをすべて見透かされるのは、どうにも落ち着かない。未央が目をそらすと、朝晴も何も言わずに天泣から目を離す。
「次の作品も楽しみですね」