心を切りとるは身を知る雨
「先生をご存知なんですか? 私の恩師なんですよ」
「やはりそうでしたか。俺も東京で何度か一緒に仕事したことがありまして、昨日、久しぶりに誠道氏のギャラリーへ行ってきたんですよ」
「そうだったんですね。実は、清倉への出店が叶ったのは、西島先生が尽力してくださったおかげなんです」
油絵作家でありながら、自身のギャラリーを運営する誠道は、若手芸術家の育成にも力を入れている。
未央が清倉に出店すると相談したとき、両親の説得、店舗のレイアウト、建築業者とのやりとりを含め、率先して動いてくれた誠道には並々ならぬ恩義がある。
「年末には展覧会を開くそうですね。いい作家は知らないかと聞かれて、未央さんをご紹介したら、すでにご存知でした」
朝晴はそう言って快活に笑ったあと、目をのぞき込んでくる。
「誠道氏は展覧会への参加を未央さんにお願いしたと言ってましたよ」
それも、誠道に聞いたのだろう。だとしたら、返事も知っているはずだ。だから、朝晴は心をのぞくような目をしている。
「西島先生からお誘いいただきましたが、出品する気はないとお断りしました」
「またどうして?」
朝晴から目をそらし、ふしぎそうにこちらを見るしぐれにも背を向けて、未央は息をつく。
「華やかな世界からは身を引きましたので」
「やはりそうでしたか。俺も東京で何度か一緒に仕事したことがありまして、昨日、久しぶりに誠道氏のギャラリーへ行ってきたんですよ」
「そうだったんですね。実は、清倉への出店が叶ったのは、西島先生が尽力してくださったおかげなんです」
油絵作家でありながら、自身のギャラリーを運営する誠道は、若手芸術家の育成にも力を入れている。
未央が清倉に出店すると相談したとき、両親の説得、店舗のレイアウト、建築業者とのやりとりを含め、率先して動いてくれた誠道には並々ならぬ恩義がある。
「年末には展覧会を開くそうですね。いい作家は知らないかと聞かれて、未央さんをご紹介したら、すでにご存知でした」
朝晴はそう言って快活に笑ったあと、目をのぞき込んでくる。
「誠道氏は展覧会への参加を未央さんにお願いしたと言ってましたよ」
それも、誠道に聞いたのだろう。だとしたら、返事も知っているはずだ。だから、朝晴は心をのぞくような目をしている。
「西島先生からお誘いいただきましたが、出品する気はないとお断りしました」
「またどうして?」
朝晴から目をそらし、ふしぎそうにこちらを見るしぐれにも背を向けて、未央は息をつく。
「華やかな世界からは身を引きましたので」