心を切りとるは身を知る雨
第二話 名残の夕立
閉店間際にやってきた若い女の子は車椅子に乗っていた。広くはない店内の中ほどへ進み、大きめの作品の前で止まると、見上げるように背筋を伸ばし、ほんの少し息を飲む。やはり、彼女のお目当てはあの作品で間違いないようだ。
声をかけようとカウンターから出ると同時に、ぐるりと車椅子を回転させた彼女が、「あそこにあったバイクの切り絵、売れちゃいました?」と話しかけてきた。
「『名残の夕立』でしたら、こちらに移動しましたよ」
入り口の正面にある棚に手のひらを向ける。そこには、ききょうの花が咲く野原に停まるクラシックなスポーツバイクと、降り注ぐ雨を描いた切り絵がある。
彼女はあんどしたように笑み、まっすぐこちらへやってくる。
「レイアウト変えたんですか?」
「もうすぐ夏も終わりますから」
実は、彼女は以前にも何度か店を訪れていた。そのたびに、名残の夕立を眺めていたから、車椅子に乗ったままでも見やすい場所に移動しておいたのだった。それは伏せて、未央はそう答えた。
「そっか。季節に合わせて模様替えしてるんですね」
「はい。名残の夕立は夏の終わりに降る雨ですから、ちょうど今の時期にぴったりなんです」
彼女はうなずいたような素振りを見せたあと、棚の前へ移動する。
声をかけようとカウンターから出ると同時に、ぐるりと車椅子を回転させた彼女が、「あそこにあったバイクの切り絵、売れちゃいました?」と話しかけてきた。
「『名残の夕立』でしたら、こちらに移動しましたよ」
入り口の正面にある棚に手のひらを向ける。そこには、ききょうの花が咲く野原に停まるクラシックなスポーツバイクと、降り注ぐ雨を描いた切り絵がある。
彼女はあんどしたように笑み、まっすぐこちらへやってくる。
「レイアウト変えたんですか?」
「もうすぐ夏も終わりますから」
実は、彼女は以前にも何度か店を訪れていた。そのたびに、名残の夕立を眺めていたから、車椅子に乗ったままでも見やすい場所に移動しておいたのだった。それは伏せて、未央はそう答えた。
「そっか。季節に合わせて模様替えしてるんですね」
「はい。名残の夕立は夏の終わりに降る雨ですから、ちょうど今の時期にぴったりなんです」
彼女はうなずいたような素振りを見せたあと、棚の前へ移動する。