心を切りとるは身を知る雨
「この作品、気になってて」

 以前よりも、一段下げた場所に飾ってある切り絵をまじまじと眺める彼女の視線は、右端に切り抜かれたバイクに集中している。『バイクの切り絵』と口にしたぐらいだし、よほど、バイクのデザインが気に入ってるのだろうか。

「先月も来てくださってましたね」
「覚えてくれてました?」
「いつも閉店近くにいらっしゃいますよね。お買い物の帰りですか?」

 車椅子の後ろには小さなマイバッグがかけられている。

「商店街のフルーツやさんのメロン、すごくおいしいから時々買いに来るんです」

 言われてみると、マイバッグにはメロンのようなほどよい大きさの丸みがある。

「おいしいですよね」

 温暖な気候に恵まれた清倉の特産品である梨や柿、ブルーベリーなど、季節ごとに収穫された果物を取り揃えたフルーツやさんには、全国から取り寄せた旬のフルーツが並ぶことでも有名だ。

「兄がメロン好きで」
「お兄さんのために?」
「疲れてそうなときは、頑張ってるご褒美に」

 ちょっとなまいきな上から目線な発言や、いたずらっ子のように笑む彼女を見ていると、兄妹の仲の良さが伝わってくる。

「がんばりやのお兄さんなんですね」
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