心を切りとるは身を知る雨
*
玄関ドアの開く音に気づいて、リビングから顔を出したしぐれは、靴を脱ぐ兄の朝晴に声をかけた。
「おかえりー。自転車直ったの?」
「ああ。部品変えてもらって、すぐに直ったよ。次に調子悪くなったら、買い替えだなぁ」
「ずいぶん古い自転車だったからねー」
自転車は清倉の祖母の家にもともとあったものだ。生前、祖父が乗っていたものらしい。商店街へちょっとした用事で出かけるときの兄は、小回りがきくからと重宝していた。
「コーヒー、飲むか?」
リビングへ入ってきた兄は、しゃれた紙袋をテーブルに乗せた。
「わあ。もしかして、駅前にできたカフェの?」
オープン前から興味があって、兄に話したのを覚えてくれていたのだろう。
清倉は自然に囲まれた町だが、駅周辺には観光客向けのおしゃれな店舗が集まっている。若い子が遊びに行くのは、もっぱら、商店街ではなく、駅の方だろう。
「そう、場違いなぐらい若い子ばっかりで、さすがの俺も恥ずかしかったよ」
苦々しげに笑い、兄は向かいに座る。
「そんなに若い子ばっかりだったの?」
「夏休みだからかな、高校生とか大学生みたいな子ばっかりだったな」
「へえ、そうなんだ」
玄関ドアの開く音に気づいて、リビングから顔を出したしぐれは、靴を脱ぐ兄の朝晴に声をかけた。
「おかえりー。自転車直ったの?」
「ああ。部品変えてもらって、すぐに直ったよ。次に調子悪くなったら、買い替えだなぁ」
「ずいぶん古い自転車だったからねー」
自転車は清倉の祖母の家にもともとあったものだ。生前、祖父が乗っていたものらしい。商店街へちょっとした用事で出かけるときの兄は、小回りがきくからと重宝していた。
「コーヒー、飲むか?」
リビングへ入ってきた兄は、しゃれた紙袋をテーブルに乗せた。
「わあ。もしかして、駅前にできたカフェの?」
オープン前から興味があって、兄に話したのを覚えてくれていたのだろう。
清倉は自然に囲まれた町だが、駅周辺には観光客向けのおしゃれな店舗が集まっている。若い子が遊びに行くのは、もっぱら、商店街ではなく、駅の方だろう。
「そう、場違いなぐらい若い子ばっかりで、さすがの俺も恥ずかしかったよ」
苦々しげに笑い、兄は向かいに座る。
「そんなに若い子ばっかりだったの?」
「夏休みだからかな、高校生とか大学生みたいな子ばっかりだったな」
「へえ、そうなんだ」