心を切りとるは身を知る雨
*
「ずいぶん、やんだなぁ。ちょうどよかったよ」
切り雨の裏口に回しておいた車の助手席に、アルバイトを終えたしぐれを乗せて、空を見上げながら発進させる。
フロントガラスを雨粒がわずかに濡らす。さっきまでのまとまった雨が嘘のように小雨になり、商店街を明るい空が覆っている。
「夕方はいつもこんな雨が降ってるよね」
窓の外を見上げていたしぐれは、シートに体を預けると、ぽつりとつぶやく。
「お兄ちゃんはさっきの話、どう思った?」
「ん? さっきって?」
「未央さんの話。友人の恋人っていう人の」
「ああ、ほろほろ雨の話か」
もう何度も眺めた作品だから、タイトルも覚えてしまった。いつも窓際に飾ってあって、色が褪せてしまうのではないかと心配していた。
しかし、今日、話を聞いて納得したところもある。あの作品を、未央は売る気がないのだろう。色褪せたならそれもまた、あの作品の価値の一つになるのかもしれない。
「あれがキャンセルになったのって、開業してすぐの頃だったみたい」
「へえ、そうなのか」
「そういうメールがあったの、見たんだよね」
「これから頑張っていこうって時にキャンセルが入ったら、ちょっとはショックだろうなぁ」
まして、友人がらみの注文だ。いっそう気合いは入っていただろうし、未央の中でこだわりのある作品だったとしても不思議じゃない。
「ずいぶん、やんだなぁ。ちょうどよかったよ」
切り雨の裏口に回しておいた車の助手席に、アルバイトを終えたしぐれを乗せて、空を見上げながら発進させる。
フロントガラスを雨粒がわずかに濡らす。さっきまでのまとまった雨が嘘のように小雨になり、商店街を明るい空が覆っている。
「夕方はいつもこんな雨が降ってるよね」
窓の外を見上げていたしぐれは、シートに体を預けると、ぽつりとつぶやく。
「お兄ちゃんはさっきの話、どう思った?」
「ん? さっきって?」
「未央さんの話。友人の恋人っていう人の」
「ああ、ほろほろ雨の話か」
もう何度も眺めた作品だから、タイトルも覚えてしまった。いつも窓際に飾ってあって、色が褪せてしまうのではないかと心配していた。
しかし、今日、話を聞いて納得したところもある。あの作品を、未央は売る気がないのだろう。色褪せたならそれもまた、あの作品の価値の一つになるのかもしれない。
「あれがキャンセルになったのって、開業してすぐの頃だったみたい」
「へえ、そうなのか」
「そういうメールがあったの、見たんだよね」
「これから頑張っていこうって時にキャンセルが入ったら、ちょっとはショックだろうなぁ」
まして、友人がらみの注文だ。いっそう気合いは入っていただろうし、未央の中でこだわりのある作品だったとしても不思議じゃない。