甘い初恋を、もう一度
つまりそれは、私達の縁も切れる、ということだった。
だから最後だし留学する前に、どうしても踏ん切りをつけるために気持ちを伝えたいと思っていた。
だけど恥ずかしくて言えない。
何度かお店に来る機会はあったが、どうしても言えなかった。
そんな出発の時間が目前に迫ってきた時、なぜか夜遅い時間に皓大君がお店にやってきた。
「酔っ払った勢いできました!どーーしても、おじさんのケーキが食べたくて!」
「ははっ可愛いこと言ってくれるねぇ」
私が手伝い要因で店に呼ばれると、閉店した薄暗い店内で、隅っこにほんの少しだけあるイートインスペースのソファーに皓大君が座っていた。
父は少し離れた厨房から、大声で皓大君と話していた。
「今日は飲み会だったの?」
「はい、大学のゼミのメンバーで俺の送別会だったんです」
「あーそれで」
「初めてビール飲んだんですけど、もう苦くてダメでしたー」
「ははは、私も好きじゃないけどね?」
そして父は、グラスに何やら液体を注いていた。
紫の液体──よく見ると『CASSIS』と書かれてあるビンで、たまに店のお菓子に使っているリキュールだ。