甘い初恋を、もう一度
思い出にしたはず、だった
──そんな初恋は遠い昔のこと。
心の隅っこにはずっと残り続けていたけれど、時が経つにつれて色褪せた思い出に変わっていった。


だけど、こんな状況は誰が予想したことだろう。
朝日が差し込む部屋の中、私はベッドに衣服を纏わず横たわっている。
そして隣で同じように裸で横たわっているのは……そんな初恋の相手、皓大君だ。


(う、嘘だ……)
だが徐々に記憶が鮮明になるにつれ、やってしまった後悔が押し寄せる。

確かに昨夜は空きっ腹に酒を飲み、自分の予想以上に酔っぱらってはいた。
キスの後、さすがにこれはヤバいと立ち上がった所で、足が盛大に縺れるぐらいは。

彼は倒れそうになる私を瞬時に抱きとめると、濡れた瞳で私を見つめる。
その瞬間気分が高揚し、何かもうどうでも良くなってしまい……流されるまま下の階のホテルの部屋に連れて行かれて、一夜の過ちを犯してしまった。らしい。


(ど、どうしよう……)
確かに社内恋愛はしていた。
だけども社長の息子で御曹司の彼とは、何もかも桁違いすぎる。
どうしようかとモゾモゾと動いていると、隣で寝ていた皓大君が起き上がってしまう。

「おはよう、花月」
「お、おはようございます……」

即座にベッドから抜け出そうとした私を、彼は腕を掴んで止めた。
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