甘い初恋を、もう一度
嫌われ者の私
私が連れていかれたのは、社長室だ。
「花月ちゃん」と気さくな笑顔を振り撒くのは、この会社の社長で、皓大君のお父さんだ。

「ごめんね。呼び出して」
「いえ、とんでもないです」

丁寧に頭を下げたところで、何だか複雑そうな瞳で私を見た。

「そういえば、長森のおじさんは元気?」
「いや、それが会ってないので……」
「まぁそうだよね。ごめんね、変なこと聞いて」

長森のおじさんとはとっくに定年退職しているが、元常務だった祖父のこと。実鈴の祖父でもある。
今の社長よりも先代──つまり皓大君の祖父 から四十年以上この会社を支えていた人だ。

母はこの祖父の子供だったが、祖父は母より弟の実鈴の父を優遇していた。恐らくだけど、勝手に家を出てパティシエになり、勝手に同じくパティシエの父と結婚し、勝手に店を持っていたのが許せなかったのだろう。

だからなのか、私は祖父に可愛がられず殆ど交流は無かったけれど、可愛がられてる実鈴からは露骨に敵対心を持たれていた。無視したかったけれど、向こうが勝手に絡んでくるので無視もできず。そんな状態だった。

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