甘い初恋を、もう一度
何があったんだ……。
オフィスは若干ざわめいている。だけど定時を過ぎると、ポツリポツリと人が帰り始めていく。
私も帰ろうかと思ったが、どうしても気になってしまう。とりあえず仕事をして待っているがその間にもバタバタと人の入れ換えや、実鈴の荷物が持っていかれたり、何かしら気になることが起きていた。
そして気が付くとオフィスには、私一人だけになっていた。
時刻は二十時半を回っていて、残業している人は居ない。
さすがにそろそろ帰るかと、パソコンの電源を落とす。
そして淹れたお茶を休憩スペースで飲んでいると、しばらく開かなかったエレベーターのドアが空いた。
「花月、一人?」
現れたのは皓大君だった。
「須賀さん」
「じゃなくて、ね?」
じゃあ何て呼べと?と言いたい気持ちをぐっと堪える。その気持ちは見透かしているようで、皓大君はプッと吹き出した。
「それで残業してたの?こんな時間まで?」
「あの、やっぱり気になっていて……あ、ちゃんと仕事はしてます!週末持ち帰ろうか悩んでた仕事があったんでしてました!」
一応作ったプリントを見せて主張すると、皓大君はふふっと無邪気に笑った。
「いいよ、教えてあげるよ」
彼は私の目の前の椅子に座った。私も向かい合って座る。