甘い初恋を、もう一度
皓大君に連れて行かれたのは、ホテルの最上階にあるバーだった。
窓からは街を見下ろすことができる。夜景がすごく綺麗で宝石箱のよう。非日常感がする。
正直、今日はそれなりのワンピースを着ていたことに安堵した。

私達は最初にカクテルを頼んで乾杯をした。
薄暗い店内で、窓際の席に皓大君と並んで座る。しばらく私は彼を避けまくっていたので、改めて隣の彼を見ると、なんだかすごく恥ずかしい。

──私の初恋は、この人だったのだ。
整った顔立ちにクールな切れ目は涼し気だけど、笑うと優しく垂れ下がる。そのギャップにいつもドキリとなる。
さっきも目が合うと、ふんわりと口角を上げて見つめられて……心臓の音がうるさい。


「この前……」
「はい?」
「この前三光デパートの会食、行けなくて残念だったな」
「ま、はい。そうですね……でも提出しないと、発売できないって言われたら仕方ないじゃないですか」


この前取引先との凄く豪華な食事会が行われていたのだけど、私は行けなかったのだ。それが大手デパートチェーン、三光デパート専用に長い時間をかけてようやく完成した新規商品発売を記念しての食事会だった。
この新規商品こそ、私が実鈴に横取りされた企画【大人のスイーツ】をコンセプトにしたゼリーだった。

なので企画者の実鈴とサポートする立場の私、そして企画部の部長、社長と皓大君が行く予定だったのだが、緊急で役所に提出しなければいけない書類を仕上げなければいけなくなってしまった。
だから私と実鈴が残業して、その会食を欠席した。
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