甘い初恋を、もう一度
皓大君がグラスを傾けて、一気にカクテルを飲み切る。
するとすぐさま店員さんがやってきて「おかわりは?」と聞いた。

「じゃあカシスオレンジで」

皓大君は意味あり気な笑みを浮かべて、こっちを見る。
私は一瞬動揺したが、いや特に深い意味は無い筈だ……と頭に浮かんだことを追い払った。


「三光デパートとの新商品」
「はい?」
「あれさ、実鈴の企画じゃなくて、ホントは花月の企画だよね?」
「……そうです、けど、証拠ないですし」

誰にも相談せず進めていた企画書だったので、実鈴が盗んだという証拠は何一つ無い。
仮にあったとしても、実鈴は上手く立ち回るぐらいの強かさと要領の良さ──むしろずる賢さと言った方がいいのか を持っているので、簡単に丸め込まれてしまうだろう。


「証拠なら、俺が持ってるけど?」
「え?」
「【懐かしい恋の思い出】というコンセプトで、“カシスオレンジ”の味が出てくる理由を知っているんだけど?」

前髪を掻き分けて上目遣いで私を見る。その視線があの時を思い出して、心臓の音が大きく跳び跳ねた。


「えっと……」
「覚えて、ないの?」
「ないです!」
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