冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
プロローグ


「どういうおつもりですか」
「どういう、とは?」

 目の前の男は、余裕のある笑みを浮かべ、申し訳ないとは微塵も思っていない顔で言う。

「とぼけないでください。結愛(ゆあ)にしたことを覚えてないんですか?」

 男はにこりとほほ笑んだ。

「覚えてるよ。彼女は大変だったね」
「大変だったね……って!」

 (れい)は男を殴りたい衝動を抑えつけた。

「悪いとか、思っていないんですか……!」
「悪い?」

 彼が手に持ったコーヒーカップからちらりと上げた目が予想以上に冷え切っていて、ぞくりとなる。

一宮(かずみや)のお嬢さんが、そんなに正義感が強くて大丈夫?」

 からかうような声色に、かっと顔が熱くなる。

(なんなの、この人……!)

「私は、あなたと結婚することはできません。信用できないし、……あなたを許せません」
「俺はそうじゃない」
「え?」

 予想外の言葉に、玲は固まった。
 彼は机の上で指を組み、居丈高ともいえる態度でこちらを見下ろしている。

「君の家柄は、俺にとって都合がいいからね」
「は……!?」
「ぜひ、結婚を前提にお付き合いしてください」

 二の句が継げない。
 信じられない。
 こんな言葉で口説かれて、うんという女がいるだろうか。

 玲は確信した。
 この男を好きになることなんて、今後一切、ありえない。
< 1 / 37 >

この作品をシェア

pagetop