冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
たしかに萌は、一般的な新入社員に比べると、髪の色も化粧も、少し派手な印象ではあった。
だが、玲が一宮の人間だと話した時、萌は明るく言ったのだ。
「玲さんがこの会社にいることによって、会社同士の取引がスムーズにいくんでしょ? それって一般社員ができることじゃないんだから、堂々としといたらいいじゃないですか」
「堂々と……」
玲はその言葉に度肝を抜かれたというか、こんな考え方をする人もいるのかと驚いた。
「それに、営業部も玲さんに対しては無茶なこと言えないのも強いですよ。めんどくさい相手がいる時、部長が玲さんを同席させてるの気づいてます?」
萌はそうして臆面もなく発言するから、部内のほかの人間をぎょっとさせることも多かった。でもその言葉は人を陥れるようなものではないし、仕事の覚えも早く、みんな、どこか嫌いにはなれなかった。
今では玲の、唯一プライベートでの付き合いがある後輩だ。
「根本的な解決にはなってないけどね。問題があるならその人に注意するとか、本当はできたらいいんだけど」
「玲さんお嬢様なのに、ほんっと真面目ですよねぇ」
「世のお嬢様に失礼じゃない?」
玲は苦笑した。
「解決しようとしたら大変ですよ。人間なんてそう簡単に変わらないし、言うこと聞かないですからね。だから玲さんパワーを使わせてもらって、みんなありがたいんですよ」
「まぁたしかに、私にはそんなに負担はないから、いいんだけど」
「適材適所ってやつです」
パソコンを叩きながらそう言う萌に、玲は彼女がいてくれてよかったと心から思うのだった。