冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
「えっ、またお見合いですか!」
そんな萌とのランチで、玲は「また」という彼女の正直な反応に苦笑した。
本当に、その通りだからだ。
「お父さんも懲りないですねぇ」
萌はパスタをくるくるとフォークに巻きながら続ける。
「ただ、はっきり言うと玲さんも、だからといって、政略結婚以外でいつかいい相手が見つかると思ってるなら甘いというか……お父さんが仰ることも分かりますよ」
「どういうこと?」
「玲さんは綺麗です。それに性格もいいってみんな知ってます。でも、会社とかで出会う男性は、付き合う分にはいいと思うんですけど、だからといって一宮のお嬢様の結婚相手が務まるかというと、みんな腰が引けちゃうというか」
「いや、そんなこと……は……」
ない、と、玲の立場では言い切れないところはある。
結婚を考える上で、一宮グループの看板はあまりに重い。
父は玲に会社を継がせるつもりはないが、玲の夫には経営に関わって欲しいと考えている。だからこれまでのお見合い相手も皆、そういった経験のある人ばかりだった。
「ちなみに、イケメンですか?」
「ああ……イケ、メン、だとは思うけど」
突然変わった話の方向に戸惑いつつ答える。
彼自身がおそらくそれを自覚し、時には利用しているであろう気配もあるから、どこか渋々という言い方になってしまった。
「じゃあいいじゃないですか。最悪離婚したって。実家太いんですから」
「じゃあいいって……萌ちゃん」
この子にはこういうところがある。
呆れながらも、正直に言った。
「萌ちゃん、ほんとに私に遠慮ないよね」
「すいません」
さすがに言い過ぎたかと、萌も少し申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
「でも、なんとなく、その人もそうなんじゃないかなぁって」
「そうって?」
萌の笑顔がどこか優しくなる。
「玲さんがそういうので人を判断する人じゃないって、分かってるんですよ」
一瞬、ぐっと胸を掴まれたようになった。
だがすぐはっとなる。
「萌ちゃん、そう言ったら私が絆されるって分かってるでしょ」
じとっとした目で見ると、萌はあはは、と楽しそうに笑った。