冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
*
伊神とはそうして、仕事終わりに何度か食事をした。
忙しいのは確かなようで、食事が終われば玲を家まで送り、また仕事に戻っていく。
(そこまでしなくてもいいのに)
ポイント稼ぎだろうとは思うのが、どこか、伊神も玲の前ではリラックスしているように見える。
そして玲のほうも、彼を許せないことや、その不遜な言動に嫌悪感を抱いているのは確かなのに、彼との時間は不思議と苦痛ではなかった。
「経営については、本当はもっと学んでおきたかったというのが正直なところです」
「今からでも遅くないよ」
大学も、本当はそういう学部に入りたかった。
だが、表に出たがる娘だと思われては困る、と父に反対されたのだ。
そんな玲の発言を馬鹿にすることなく、伊神は優しく言う。
無責任に持ち上げているだけかと思えば、そうではないようだった。
「君には生まれつき、お父さんという教科書をそばで見て育ったという強みがある。お父さんのやり方を受け入れられない時もあるだろうが、君を見ていると、グループのトップとしての立ち振る舞いは、自然と身に付いていると思うよ」
玲ははっとなり、なんともいえないむず痒い気持ちになった。
父との交遊関係の中から少しでも何かを吸収したいと、ずっと思ってきた。だから、自分の努力を認めてもらえたような気持ちになったのだ。
だが、伊神の言葉はただ玲を持ち上げるだけでは終わらなかった。
「ただ、経営それ自体に関しては素人なのは間違いない。変に口出しをすれば、グループを崩壊させる危険性もある」
容赦のない言葉に、ぎゅ、と下唇を噛む。
だが、頭の隅で気づいていた。
玲に必要なのは、こうして歯に衣着せずアドバイスをくれる人なのだと。
伊神とはそうして、仕事終わりに何度か食事をした。
忙しいのは確かなようで、食事が終われば玲を家まで送り、また仕事に戻っていく。
(そこまでしなくてもいいのに)
ポイント稼ぎだろうとは思うのが、どこか、伊神も玲の前ではリラックスしているように見える。
そして玲のほうも、彼を許せないことや、その不遜な言動に嫌悪感を抱いているのは確かなのに、彼との時間は不思議と苦痛ではなかった。
「経営については、本当はもっと学んでおきたかったというのが正直なところです」
「今からでも遅くないよ」
大学も、本当はそういう学部に入りたかった。
だが、表に出たがる娘だと思われては困る、と父に反対されたのだ。
そんな玲の発言を馬鹿にすることなく、伊神は優しく言う。
無責任に持ち上げているだけかと思えば、そうではないようだった。
「君には生まれつき、お父さんという教科書をそばで見て育ったという強みがある。お父さんのやり方を受け入れられない時もあるだろうが、君を見ていると、グループのトップとしての立ち振る舞いは、自然と身に付いていると思うよ」
玲ははっとなり、なんともいえないむず痒い気持ちになった。
父との交遊関係の中から少しでも何かを吸収したいと、ずっと思ってきた。だから、自分の努力を認めてもらえたような気持ちになったのだ。
だが、伊神の言葉はただ玲を持ち上げるだけでは終わらなかった。
「ただ、経営それ自体に関しては素人なのは間違いない。変に口出しをすれば、グループを崩壊させる危険性もある」
容赦のない言葉に、ぎゅ、と下唇を噛む。
だが、頭の隅で気づいていた。
玲に必要なのは、こうして歯に衣着せずアドバイスをくれる人なのだと。