冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
結愛が言うには、感情的に責め立てる元夫の父に比べると、伊神弁護士は淡々と、法律的な観点を述べるだけだったという。
もちろん思いやりのある態度とはいえなかったが、過剰に攻撃されたわけではない、と結愛は言う。
だが玲には、結愛が自分にもそう言い聞かせているのが、痛いほど伝わってきた。
玲は迷ったが、もうどうせここまで話してしまったからと、先日伊神と会った時に抱いた違和感をぶつけてみることにした。
「少しだけ、気になることがあって……ほんとにごめん、思い出したくないだろうけど、あの人、拓斗くんのことで……」
「う、ん……」
結愛の顔色を窺って続ける。
園池拓斗は、結愛の元夫だ。
「園池のお父さん……園池議員の信用があれば得られるものって、なんなんだろう」
結愛は眉を寄せた。首を傾げ、答える。
「ほかの政治家とのコネクションとか……? うーん、どうなんだろう……私ほんとに、何も分かってなかったし、知ろうとしてもなかったから……」
「そんなことないよ」
「何か気になることがあるの?」
「うん、なんだか……伊神さんって、それほど地位に固執するタイプでもない気がして……」
あの瞳の鋭さは、いったいなんだったのだろうか。
でも、玲は人を見る目に自信があるわけではない。自分の期待が見せた幻覚なのかもしれない。
「気になってるんだね」
結愛が何かに気づいたという様子で嬉しそうに言うから、玲は慌てた。
「違うの! 変なことに巻き込まれないようにと思っただけ!」
「玲。私は、玲に幸せになって欲しいよ。私のことは気にしないで」
結愛はそう言って、ふわりと微笑んだ。