冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
第四章 彼の秘密
「信用してくれるのはありがたいけど、部屋に男を上げるべきじゃないよ」
伊神が言っていることは正しい。
「しかも、さっきの今だ。……怖いだろ」
「……だからです。一緒に、いていただけますか」
自分でも、一人の独身の女として、あまりに警戒心のない行動だとは分かっている。
だが、それでも今一人で部屋にいて、彼が帰ってしまうほうが怖かった。
伊神が溜め息をつき、渋々という様子で玲のあとをついてくる。
その姿に、ずきりと胸が軋んだ。
これから玲は彼に聞かなければならないことがあるが、この溜め息が、その答えを示しているような気がしたからだ。
部屋に上がると、これしかないですが、と言ってお茶を出す。
「ありがとう」
伊神はそう言って、玲がテーブルの向かいに座るやいなや切り出した。
「本当に、申し訳なかった」
そう言って頭を下げる。
「俺の判断ミスだ。君を危険に晒してしまった」
「……はじめから説明していただけませんか」
伊神は顔を上げると、眉を寄せたまま頷いた。
「もう勘づいてるところもあると思うからはっきり言うが、園池議員に近づき、その信用を勝ち得ようとしたのは、彼らを摘発するためだ」
「て、摘発……?」
「彼らはクラウドファンディング詐欺に荷担していてね。何人もの大物政治家が汚い金を受け取ってる」
「な……っ」
一度に情報を与えられて、玲は先ほどまでの恐怖を一瞬忘れるほどだった。