冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
「ちょ、ちょっといきなりすぎて、頭が整理できません」
「要は、詐欺企業との癒着だな。人の善意に付け込む、政治家の風上にも置けない奴らだ」
今までになく強い言葉だ。
まさか、それほどの話だとは思っていなかった。
驚いて言葉を出せない玲に、伊神は続ける。
「大学時代に会社を作ったときに、その団体に邪魔をされたというか……まぁ、それがきっかけで調べたんだ。やり方があくどくて、俺は、許せなかった」
その目に鋭い光が宿る。
「伊神さんは……どんな会社をされてたんですか?」
「若者の農業への参入を応援する事業、と言ったらいいのかな。メインはレンタル農園、土地を貸したい人と借りたい人の間に立つ商売だね。彼らは、心から若い人に農業を始めて欲しい、その手伝いをしたい、と願う年配の方たちを言葉巧みに騙して金を寄付させ、集めた金を実際の事業には回さず、懐に入れていたということだ」
「なんてことを……」
「伝手を辿って調べてみたら、その裏にいたのが名だたる政治家ばかりでね。声を上げても、当時は、どうにもできなかった。悔しかったよ」
「それで、弁護士に……?」
「証拠を集めるには、絶対的な味方だと思わせて、情報を得るのが一番だと思ったんだ」
そう言って、眉を下げる。
「結愛さんには本当に、申し訳なかった」
玲は唇を噛んだ。
「彼女の気持ちを踏みにじるようなことをしたのはたしかだ。だけど、彼と早々に関係を切ることができたのは良かったと、俺は今でも思っている」
その言い方に、玲は彼を睨みつける。
たとえそうだとしても、感情の上で受け入れられない部分はある。
伊神は玲の反応ももっともだというようにどこか悲しげに笑い、それにね、と付け加えた。
「あのタイミングで、彼女が示談金を受け取るのはおすすめできなかった。表面上だけ離婚して、実際は彼女も首謀者の一員だと思われる可能性もあった。場合によっては、自分たちの身代わりにして、罪を背負わされたかもしれない」
玲は絶句した。
まさか、結愛がそんなことに巻き込まれる可能性があったなんて。