冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
第五章 強くなる
あれから数日経ち、玲は安全を期して、一時的に実家から通勤をするようになっていた。
落ち着くまではそうしてくれと伊神からも強く言われたからだ。
そうしてタクシーで帰路につく中、思い返す。
――君を守るとか、危ない目には合わせない、とか。
普通、そう言ってくれるものではないのだろうか。
(おかしいよね……!)
玲は顔を覆った。
何度考えても、あの雰囲気で、あのタイミングで、「一緒に闘ってもらわないといけないけど」と言うのは彼くらいだろうと思う。
でも、一番おかしいのは……。
(それを含めても、私が、彼がいいと思ってしまっていることだ)
頭を抱えたくなる。
もう、彼に惹かれている自分を認めるしかない。
*
気まずそうな顔で現れた玲に、結愛は微笑んだ。
玲がこれから何を言おうとしているか、きっと、もうバレてしまっている。
「私、ね……」
「うん」
「私、伊神さんのこと、好きになって……しまって……」
「そうかなって思った」
怒らない?
でもそう口に出しては聞けなくて、おそるおそる結愛を見ると、彼女は顔を綻ばせている。
「な、なに、その顔……」
結愛にこんな顔で見られることは、あまりない。
「玲ちゃんをこんなふうにしちゃう人だったとはな~」
「ちょっと、結愛……」
「でも、玲ちゃんがいいなって思った人は、信用できると私も思う」
そう言ってくれる結愛に、まだ、全部を伝えることはできない。
でも、いずれ彼女にも、彼から本当のことを話してもらえるように。
私も、闘わなくちゃいけない。
そう、決意した。