冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
第五章 強くなる

 あれから数日経ち、玲は安全を期して、一時的に実家から通勤をするようになっていた。
 落ち着くまではそうしてくれと伊神からも強く言われたからだ。
 そうしてタクシーで帰路につく中、思い返す。

 ――君を守るとか、危ない目には合わせない、とか。
 普通、そう言ってくれるものではないのだろうか。

(おかしいよね……!)

 玲は顔を覆った。
 何度考えても、あの雰囲気で、あのタイミングで、「一緒に闘ってもらわないといけないけど」と言うのは彼くらいだろうと思う。
 でも、一番おかしいのは……。

(それを含めても、私が、彼がいいと思ってしまっていることだ)

 頭を抱えたくなる。
 もう、彼に惹かれている自分を認めるしかない。



 気まずそうな顔で現れた玲に、結愛は微笑んだ。
 玲がこれから何を言おうとしているか、きっと、もうバレてしまっている。

「私、ね……」
「うん」
「私、伊神さんのこと、好きになって……しまって……」
「そうかなって思った」

 怒らない?
 でもそう口に出しては聞けなくて、おそるおそる結愛を見ると、彼女は顔を綻ばせている。

「な、なに、その顔……」

 結愛にこんな顔で見られることは、あまりない。

「玲ちゃんをこんなふうにしちゃう人だったとはな~」
「ちょっと、結愛……」
「でも、玲ちゃんがいいなって思った人は、信用できると私も思う」

 そう言ってくれる結愛に、まだ、全部を伝えることはできない。
 でも、いずれ彼女にも、彼から本当のことを話してもらえるように。
 私も、闘わなくちゃいけない。
 そう、決意した。
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