冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~


 扉が閉まり二人きりになると、一気に身体から力が抜けたことを自覚した。やはり緊張していたのだ。
 でも、まだまだ。これから披露宴だ。
 すると隣から、ふ、と笑い声が聞こえた。

「どうしたの?」
「いや、思い出しちゃって。お義父さん、すごい顔してたな」
「ほんとに」

 二人で笑い合う。
 バージンロードで手を離す時、父は参列者に見えない角度で、亮介を睨み付けていたのだ。
 いつもと変わらない彼の様子に、緊張が解ける。

「でも、あれでいてわりとあなたのこと、気に入ってると思う」
「そう?」

 くすくすと笑う亮介が、ふと、玲の耳元に口を寄せた。

「これが終わったら、やっと二人きりだな」
「亮介」

 彼を咎めるように睨み上げると、色気を隠せない目がこちらを誘惑するように見ている。

「まだ、そんな目で見ちゃだめ……」

 彼のその目は、日に日に強くなる。

(私は、どうなってしまうんだろう……)

 身体の芯から、ぼっと熱くなった。
 これからの甘い生活に、耐えられるだろうか。
 そう思い、玲の心は期待に疼くのだった。
 
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